第7話 そこで正座しててね

 その後、俺と彩音は緊急作戦会議を行う。


「おい、どうすんだよ」


「そうだね。ホントにマズイね」


 現在、夕食が終わり、各々引っ越しのため、自宅から持ってきた道具を片付けてる。


 みんなの片付けが終わった後、5人一緒にお風呂へと入る流れだ。


「と、とにかく俺は一瞬で湯船に浸かる。俺の裸を見られずに浸かることができれば大丈夫だろ」


「だっ、ダメだよ!」


 名案だと思った案を彩音から却下される。


「なんでだよ。俺が男だとバレない方法はこれしか……」


「そっ、それじゃ、葵くんが湯船の中からみんなの裸を見ることになっちゃうよ!」


「いや、そんなことしない……」


「ダメなものはダメなの!」


「………はい」


(おぃぃぃぃぃぃ!!割といい案だと思ったのに!)


 しかし、彩音がダメと言うので俺は引き下がる。


「じゃあ、どうするんだよ」


「そっ、それは……」


 俺は彩音に聞くが……


「「…………」」


「おい、いい案が出てこねぇじゃねぇか」


「こんなの無理だよー!」


 彩音が根を上げる。


「葵くんの裸を見られるわけにはいかないでしょ!?それに加えて、葵くんが他の女の子たちの裸を見ないようにするなんて!」


「だから、俺が速攻で湯船に浸かって、彩音たちの裸を見ないようにすればいいんだって」


「うっ、その方法しかないか……」


 彩音が渋々、俺の案を了承する。


「いい!ぜーったい、女の子の裸を見ちゃダメだからねっ!」


 彩音からマジ顔で警告される。


「あ、あぁ。大丈夫だ」


 そんな感じで作戦が決まった。




 その後、引っ越し作業を程々にして、俺は急いで脱衣所に向かう。


(彩音曰く、後10分でみんなが来るらしい。それまでに俺は身体を洗って、湯船に浸かる必要がある!)


 そのため猛ダッシュで着替える。


 ちなみに、頭を洗うと、濡れた髪にカツラをつけることとなるため、泣く泣く頭を洗うのを断念する。


 タオル一枚となった俺は大浴場に入る。


(おー!旅館にある大浴場だ!)


 湯船は広くて、洗体の場所もたくさんある。


(何より嬉しいのはお湯の色が白い!)


 そう、俺の作戦で1番の鬼門がお湯の色だった。


(お湯の色が透明とかだったら俺が男だと気づかれる可能性はあったが、一安心だ)


 そう思い、俺は身体を洗う。


 すると、脱衣所が騒がしくなる。


(ヤベっ!急がないと!)


 俺は慌てて洗体して、湯船にダイブする。


 そして、みんなの到着を待つ。


 すると、脱衣所の方から…


「あっ!佐倉さん!タオルくらい巻いた方が……」


「女同士で気にすることなんかないぜ!」


「いや、中には……」


 “ガラガラ〜!”


「おー!広いお風呂だな!泳ぎ甲斐がありそうだ!」


 そんなことを言って佐倉さんがお風呂場に入って来た。


 生まれたままの姿で。


(ぐふっ!)


 俺は慌てて佐倉さんから目を逸らす。


(ヤ、ヤバいっ!柔らかそうなものが2つ見えたっ!ぷるんって揺れてた!)


 俺は咄嗟に目線を逸らすが、俺の目が佐倉さんの双丘を少しだけ捉えていた。


(てか、女の子ってタオルとか巻かないの!?男は巻かないけど、女の子はタオルを巻くんだと思ってた!)


 という感じで、俺の思い込みによって佐倉さんの裸を見てしまう。


 そのため、俺は必死に忘れようとするが…


(やっぱり触ると柔らかいんだろうな……)


 そんな思考回路に至る。


(ってダメだ!忘れろ!でないと……)


「ねぇ、葵くん。もしかして、佐倉さんの裸……見た?」


(ヒィッ!)


 いつの間にか俺の後ろに彩音がいた。


「み、みてない。俺はずっと天井を見てたから脱衣所の方なんか見てない」


「へぇー、そうなんだ。そういえば、佐倉さんって服の上からじゃ分からないけど、胸が大きいね」


「そうだな。俺も驚いた。佐倉さんは着痩せするタイプ…………あっ」


 自分で墓穴を掘る。


「ねぇ、最後に言い残した言葉はある?」


「…………すみません」


「そこで正座しててね」


「…………はい」


 湯船の中で正座する羽目となりました。

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