第4話 あははっ!待って、めっちゃお腹痛いww
俺は断ることができず、泣く泣く美少女4人と別荘で共同生活をすることとなった。
男1人に美少女4人という天国のような状況となれば普通は大喜びだ。
しかし、俺は女装して共同生活をしなければいけない。しかも、男とバレないように。
(どーすればいいんだよ…)
未だに提案者である氷室さんの周りで、水野さんと佐倉さんがはしゃいでいる。
「なぁ、そういえば男嫌いの女の子がメンバーにいるんだろ?」
今回、俺が女装して歌の指導を行った理由は、メンバーの子に男嫌いな子がいるから。
「それって誰なんだ?」
「あー、それは…」
と、彩音が話している時…
「新しいメンバーが加わったんですね!」
勢いよく扉を開けて、1人の女性がレッスン場に入ってくる。
20代後半くらいの綺麗な女性で、黒髪をポニーテールにしている。ポニーテールが腰くらいまであり、胸はスーツを着ててもわかるくらい大きい。
しばらくキョロキョロと辺りを見渡していると、俺と目が合う。
そして…
「うわぁー!これまたすごく可愛い女の子が加わりましたね!」
そんな感想を言う。
「彩音、この人は?」
「この方は『
「はい!私、マネージャーの八神です!これからよろしくお願いします!」
「俺は立花葵です。よろしくお願いします」
俺も八神さんに倣って挨拶をすると…
「ま、まさかの俺っ娘です!この時からキャラ付けを頑張っているとは……素晴らしい心がけだと思います!」
(いや、そういうわけじゃないんだが……まぁ、否定しなくても良いか)
俺は訂正するのが面倒なので、キャラ付けということにする。
俺たちの自己紹介が終わると、氷室さんが八神さんに話しかける。
「八神さん。以前、社長と八神さんにお話しした、メンバー全員で一緒に暮らす件。メンバー全員から許可を取れましたので、さっそく今日から一緒に暮らしたいと思います」
「わかりました!社長にも伝えておきますね!」
「お願いします」
と、いうわけで、さっそく今日から共同生活を開始することとなり、俺たちは引っ越しの準備があるため、1度解散することとなった。
(あれ?俺、何か彩音に質問してたはずだが……ま、いっか。いつか思い出すだろう)
俺は思い出すことを諦めた。
解散ということとなり、俺は今、社長の車に乗っている。
理由は、社長が俺の両親に手続き等で用事があるため。
ついでに、俺と家が隣同士の彩音も社長の車に乗り込んでいる。
俺と彩音は社長に聞こえないように…
「なぁ、俺の両親に会う時点で俺が男ってバレるけど、どうする?」
「そうだね。社長にはバレても良いかもしれないけど、できれば隠し続けたいよね」
「だよな。じゃあ、家族にメッセージを送っておくか」
俺は家にいるであろう妹に、女装してアイドルをすることになった流れを説明しつつ、メッセージを送る。
すると…
『あははっ!待って、めっちゃお腹痛いww』
めっちゃ笑われる。
『絶対父さんか母さんに伝えるんだぞ?」
『わかったー!お母さんに伝えておくよ!お兄ちゃん……じゃなかった、お姉ちゃん!……あははっ!お姉ちゃんだって!やばっ!めっちゃ面白いっ!』
『しばき倒すぞ!』
そんなやり取りをする。
しばらく車に揺られると、俺の家に到着する。
彩音は自分の家へ帰り、俺は家の鍵を開けて社長を家に招く。
すると…
「あ、おかえり!お兄……じゃなくてお姉ちゃん!」
血の繋がった妹である『
俺の1つ下で高校1年生。長い黒髪をツーテールに結んでいる。お兄ちゃんである俺が思うのも間違っているが、かなりの美少女。
女装している俺を普通に出迎えてくれたが、口元がピクピクしており、笑うのを我慢していることがわかる。
今、結衣にツッコんでいる時間はないため、俺は無視する。
「父さんか母さんはいるか?」
「うん!お母さんがいるよ!」
「わかった」
俺は社長をリビングに誘導すると…
「あら、おかえり。その方が連絡にあった事務所の社長ね」
俺の母さんである『
俺たちと同じ黒い髪を腰まで伸ばしており、20代後半から30代と思われてもおかしくないくらい綺麗な女性。
俺が社長に母さんを紹介すると…
「ん?どこかで見たことあるような……」
社長が首を傾げる。
(多分テレビか何かで見たことがあるんだろうな)
そう思い、教えようと思うが…
「いや、気のせいか」
社長が考えるのをやめたため、俺も教えるのをやめる。
(今は母さんの正体よりも、結衣に伝えた俺の言葉が母さんに伝わっているかが心配だ)
俺は母さんに社長を紹介すると、2人は諸々の手続きに移った。
ちなみに結衣は社長から見えない位置で声を殺して笑っている。
(アイツ、後でお仕置きだな)
そんなことを思いつつ俺が結衣を睨んでいると…
「では、最後に何か質問はありますか?」
どうやら手続きが終わったようだ。
「そうね。例えばなのだけど、社長の事務所で女装している男性を女性アイドルとして活動させたらどうなるのかしら?」
「んー、そうですね。このご時世、年齢を偽って活動する人や事務所が一体となってプロフィールを偽るところもあります。なので、私はその方が女装して活躍することができるのなら、全面的にバックアップすると思います」
「そう。それなら安心ね」
「あ、ありがとうございます?」
社長は俺が女装していることを知らないため、母さんが何故この質問をしたのか、理解できていない様子。
(母さん、俺が女装してるってバレた時の保険をかけてくれたんだな。これで、俺が女装しているって社長にバレても、解雇されたりすることはなさそうだな。結果を出せばの話だが)
母さんの頭の良さに感嘆する。
そのほかに質問したいことはないようで、社長は事務所に戻る。
「ありがとう、母さん。息子が女装してても疑問に思わず手続きしてくれて」
「手続きくらい問題ないけど、聞きたいことは山ほどあるわね」
「ですよねー」
俺は女装してアイドルになった経緯を説明し、今日から女の子達と共同生活をすることも伝える。
「なるほどね。面白そうなことになってるじゃない」
「お兄ちゃん!彩音さんを含めた4人の女の子と一緒に住むんだ!所謂、ハーレムだね!」
「俺が女装しなければ喜べる状況なんだけどな」
ハーレムではあるが素直に喜べない。
「彩音ちゃんの夢を叶えるため、目立たずに彩音ちゃんをサポートすることは分かったわ。でも、これだけは言わせて。葵は歌の仕事をしている私とお父さんの子なの。だから、歌だけは本気で歌って」
母さんが真面目な表情で話す。
「わかった!本気で歌うよ!」
俺は母さんに誓った。
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