第11話「シャドウウルフ退治」
クラリスさんがボクの指示通りに
こちらの動きに気づいたのだろうシャドウウルフは、サササーッと速やかに逃げ出した。
開けた岩場を走り抜け、木々の下に密集した茂みの中に隠れ潜んだ。
普通の狩人なら、それで終わり。
だけどボクらは普通じゃない。
物理最強の聖女様と、敵の居場所がわかる狩人のタッグだ。
「絶対に逃がすもんか……っ」
つぶやきながら、ボクも走り出す。
弓に矢をつがえつつ、クラリスさんと併走するように。
『
およそ普通の人間とは思えない速度で。
クラリスさんはシャドウウルフを追い続けた。
茂みを駆け抜け、幅五メートルの崖をジャンプで飛び越え、どこまでも追跡をやめない。
そして、このジャンプが決め手だった。
シャドウウルフが飛び越えた先にあるのは開けた岩場。
その小高い岩の頂上で、弓を構えたボクが待っていた。
──グウルルルルゥーッ!?
S級のオーラを漂わせるクラリスさんの追跡を振り払うことに集中していたシャドウウルフは、ボクの存在に驚き慌てた。
矢を回避するか、打たれる前にボクを殺すか。
迷った末に選んだのは、スキル『
発動させた瞬間、手近にあったモミの木の下の影にどぷんとばかりに飛び込んだ。
影の大きさは直径五メートルほど。
適当に撃っても矢は当たらない。
一発外せば二発目を撃つ間に隙が出来、その間にシャドウウルフは逃げてしまうだろう。
もちろんこちらも、そんなのは承知済み──
「クラリスさん! 今です!」
「はいロッカさん! 喰らえ『
クラリスさんが聖なる言葉を口にすると、空中で光が弾けた。
聖職者が
──キャウゥゥゥンッ!!!?
自らが潜んでいた影を消されたシャドウウルフは、たまらず地上に飛び出した。
そしてそこへ──
「待ってました! 『
青白い光を帯びた矢が、シャドウウルフの胴を射抜いた。
心臓を貫いたのだろう、シャドウウルフは二、三歩よろめいた後、ドウと倒れた。
そのままぴくぴくと震え、やがてピタリと動きを止めた。
「……え、一発? ボクが、ホントに? シャドウウルフを?」
筋力アップに鋭さアップ、『聖光』による目くらまし効果発動中の完璧なタイミングの一撃だったこと、それに加えてちょっとの幸運。
様々な要素が重なったとはいえ、レベル差のあるシャドウウルフを一発で仕留めることが出来た。
それは今までのボクには考えられないことで……ほとんど奇跡で……。
「わああああ……っ」
「やった! やりましたねロッカさん! お見事な一撃でした!」
「わああああああああっ! やったああああああーっ!」
あまりの嬉しさに、喜びにボクは我を忘れて歓声を上げた。
駆け寄って来たクラリスさんと抱き合い、何度も何度も。
頬を染め興奮したクラリスさんが、「ああもう死にそう……幸せ……」とかなんとかつぶやきながら、その場に崩れ落ちるまで。
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