第18話 裏金疑惑《読み取り不可》
警備員さんと卓球する。
ひとしきりやってから休んだ。
「何か噂がないかな?」
「ここだけの話にしてくれるか。金属で出来たアタッシュケースが定期的に運ばれている。護衛が5人ぐらいいてな」
「それはまた胡散臭い話だ」
「護衛は社内の人間?」
「ああ、見た顔だ」
この情報はどう考えたら良いだろう。
おそらく現金が運ばれているんだな。
帳簿に載ってない裏金かな。
だとすると会社ぐるみだ。
本当に胡散臭い話に思える。
うかつに首を突っ込むと火傷しそうだ。
警備員さんが出て行ったので、久美子にメールする。
そして電話を掛けた。
『どう思う?』
『関係はなさそうだけど、分からないわ。プログラム的に言うと【コメント】が打ってない』
『情報不足ってことだね』
裏金疑惑ありとスマホにメモした。
さて、頭もリフレッシュできたので休憩も終わりだ。
遊戯室は噂を拾い集めるのに良い場所だった。
ファンタジー小説の酒場といったところだな。
こんど噂を拾う時にはここに寄ろう。
頭がすっきりした所で仕事をこなすか。
今年、小学校に入学する子供は。
まずは入学済みの子を除外。
次に2016年4月2日から、2017年4月1日の間に生まれた子供を抽出。
ネットで調べたから間違いない。
これに病気で送れている子2016年4月2日以前に生まれた子を抽出。
これで間違いないはずだ。
久美子にデータ抽出条件のメールを送る。
『それで合っていると思うけど、6年生を超えた年齢に祝いの品みたいなのを送るのはどうかな?』
『だね。小学校を出てない訳だから行く権利はあると思うけど、さすがに6年生で止めておいた方がいいな。データを渡す時、病気で遅れてる子のデータは別にしておいた方がいいかも。場合によっては気分を害すると思うから』
自分のデスクに座ってパソコンを起動する。
入学のデータを抽出して、社内メールで係長宛に送った。
ふぅ、一つ仕事が終わった。
それにしても4月1日の扱いがあんな複雑になっていたとは。
エープリルフールに生まれた子供がクラスで一番若いのか。
勉強になったよ。
「聞いたわよ。
同僚の女性社員から話掛けられた。
「話を広めないでくれるかな」
「もうみんな知っているわよ。マスコミの取材は受けた?」
「いいや」
「もったいない。テレビに映れるわよ。モザイクの変声機かも知れないけど」
「嫌だよ。人の死を自慢げに話したくない」
「そう、私なら飛びついちゃうな。モザイクなしで良いって、言っちゃいそう」
会社から出ると、マスコミが追いかけてきそうだ。
アパートまで来るかな。
来るんだろうな。
密室殺人なんて、ワイドショーや週刊誌の恰好のネタだ。
今夜からどこに泊まろう。
ホテルをとるしかないか。
また出費がかさむ。
事件手当とか出ないだろうか。
とにかくビジネスホテルを予約しよう。
3日間で方がつくかな。
この会社に出入りするのがまた一苦労になりそうだ。
会社の前にタクシー呼んでも、乗るまでに囲まれる。
乗っても、きっと後を追って来るだろう。
実に困った事態だ。
『久美子、助けてくれ』
『どうしたの?』
『第一発見者だと社内の人間にばれてる。マスコミにもばれているだろう。会社から気づかれずに出たいが、出られない』
『そんなの、スモークシールドのフルフェイスヘルメットを被って、バイクで出れば良いわ。免許持っているでしょ』
『原付なら乗れる』
『バイクをレンタルすれば良いわ。ヘルメットなら届けてあげる』
『恩に着る』
『良いのよレストランを奢ってくれるんでしょう』
それがあったな。
ちゃらにされたか。
まあ良いや。
『まあね』
『事件のアドバイス料は後で請求するわ』
『お手柔らかにお願いするよ』
『ふふふ』
久美子に対する借りが増えていく。
入学の抽出と事件のアドバイスか。
安いとはいえ定食屋を10回以上おごらないといけなくなりそうだ。
僕宛にピンクのヘルメットが届いた。
速攻で届いたが、バイク便でも使ったのかな。
被ってみる。
いい香りがした。
久美子の匂いだ。
自分のヘルメットを貸してくれるなんて、やっぱり惚れられているのかな。
いいや、ヘルメットだぞ。
相乗りする時なんかは貸し借りは普通だ。
意識する必要はない。
でも匂いが、いやがおうでもその事を意識させる。
僕は慌ててヘルメットを脱いだ。
そうだ。
香りだ。
あの事件の現場で強い木の匂いがして、ボンドの匂いと薬品の匂いが僅かにした。
僅かな匂いは気にもしなかったが、重要かも知れない。
僕はその事を久美子にメールした。
【でかした。私の推理通り。】と返信があった。
重要だったらしい。
おぼろげに密室のトリックが分かった。
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