第13話 プレイボーイ《領域確保》
次は営業の
角刈りみたいな短髪で、男らしい格好だ。
身長も190センチ近くある。
細マッチョという奴で意外と女性にもてる。
「よう」
「よう」
片手を挙げて挨拶する。
「アンケートなんだけど。去年の2月17日はどうしてた?」
「その日ならデートだな。バレンタインデーの後の一週間はデート三昧だった」
羨ましい奴だ。
とうぜん相手も全員違うのだろうな。
「休みに関して何かあるか?」
「あればあるだけ欲しい」
「まあそうだよな。僕もそう思う」
「休みばかりじゃ成績が上がらないから、その辺は考えどころだけどな」
「有給は全部使っている?」
「ああ、もちろん」
「よく営業成績が落ちないな」
「そこは大学の伝手という奴だよ。OBがそこらかしこにいる。上下の区別さえしっかりしとけば良いだけさ」
「何を売っているんだったっけ」
「俺の担当は電子顕微鏡だな」
「物凄く高額なイメージがあるけど」
「安くていいなら玩具でもそういうのを売ってるぜ」
「長くなったな。アンケート、サンキュウな」
「こんな事ならいつでも言ってくれ」
パソコンも苦手だが電子機器も苦手だ。
電子顕微鏡などと言うと鳥肌が立つ。
スマホは使えないと仕事に困るので体で覚えたが。
【女にもてる。営業成績は良い。電子顕微鏡を売っている。2月17日はデートだった】
殺人を犯すような奴じゃない。
久美子にデータを送ってから電話する。
『もしもし、気づいたことは?』
『
『いいや、男が全部持つタイプだ』
『プログラム的には【領域確保】の問題よ。リソースにも際限はある。使うなら確保しないと』
『金のことを言っているのか?』
『まあね』
給料だけじゃ遊ぶ金はきついか。
『犯罪の兆候があるとでも』
『彼は嘘をついたわ。あなたの会社が扱っている電子顕微鏡は数千万単位の価格よ』
なんでそんな事を言ったのかな。
『世間話で、玩具があると言っただけだろ』
『そうね。でも素直に【高いぜ、数千万はする】と、言っても良いと思わない』
『思うけど』
『プログラム的には【仮関数】ね。中身のない物で話を誤魔化したのよ』
『実際の中身は犯罪だっていうのか?』
『分からないわ。プログラムなら嘘をつかないけど人間は嘘をつく。もっともプログラムを書いている人間は嘘を書いたりするわ。嘘の仕様説明書のなんて多いこと』
『僕は
『プログラム的には【テストプログラム】よ。実際に色々と試してみれば良いわ』
『
『ええ』
やらないといけないようだ。
『
『ないわね。どうしたのあなた達仲が良かったじゃない。彼女でも寝取られた?』
『ごふっ』
余りのことにむせてしまった。
『ご想像にお任せするよ。何でも良いから、何かない?』
『そうね。噂があるわ』
『もっと詳しく』
『ガールフレンドにも秘密で、密会しているらしいわよ。その相手が逆玉で良い所のお嬢さんという噂よ』
誰と会ったか秘密にするなんて奴らしくないな。
女と付き合っても、他の女とも付き合っているって、平気で言う奴だからな。
あけすけに話すので修羅場にはならないらしい。
嫌なら別れるというスタンスみたいだ。
僕には出来ない芸当だ。
『相手は誰?』
『それが分からないのよね。ガールフレンド達が聞いても、仕事上の付き合いだからとしか言わないらしいの』
『ありがと。あとでお菓子を差し入れに持っていくよ』
『みんなの分も忘れずにね』
『分かっている』
どういうことだろう。
何千万の機械を扱っていると、リベートがあるとしたら相当だろうなと、頭に浮かんだ。
だいたいは、こういう構図だ。
会社になんとか言い訳をして、安く商品を売る。
客の会社は営業マンに幾ばくかの金を払う。
安く売ってもらった見返りだ。
メモしたくないが、スマホに書き込んだ。
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