第1閉塞進行! 学校-1

 今日は、待ちに待ったわけではない高校の入学式の日である。まわりの他の高校も入学式だったらしく朝から真城鉄道はいつもよりも若干混雑していた。神妙な顔つきの新入生がうめつくしている体育館の中で長いったらありゃしない校長の話を聞かされた後、2時間40分後にやっと教室に移動となった。拷問か?これ。俺は1年1組に配属された。二つ言わせて欲しい。一つ目、入学式に2時間40分ってどんな暇な学校だよここは。まさかこの学校の横に建っている世界遺産の城のようにたくましく凛々しく我慢できるような・・というようなものを生徒に求めてるのか。諦めたほうがいいぞ、校長。二つ目、16年間1組ってどういうこと⁉。俺は幼稚園、小学校、中学校と15年間何の因果かわからないがずっと一組だった。だからさすがに高校生にもなったらその呪縛は解けると思っていたがそうはいかなかったらしい。よってまともなクラス替えというものを知らないまま学生生活を送っているのである。


 教室に移動したら担任の黒岩先生が入ってきて「はーい。静かにー。入学式の呪縛から解放されたからってスマホ触るなー。次触ってるの見たら没収するからなー。」とサラッと怖いことを言い出した。先生でも呪縛って言ってるなら何とかならんのかね。あの校長の長話。そしてみんなが静かになると「今日から1年1組の担任の黒岩です。地理を教えています。1年間よろしくお願いします。私は電車部こと鉄道研究部の顧問もしています。鉄道に興味があるやつはぜひとも来てくれって言いたいのですが来ないのが現状です。どこの部活にも入る予定がない人は是非見学だけでも来てくださいね。」というありきたりな教師のあいさつがあった。終わったら次に「それじゃあ、自己紹介をしてもらおう。」と言い出した。赤の他人がいろんなとこから集まってきてるわけだからな。そして、前から順番に挨拶をしていった。挨拶の内容は氏名と趣味や特技などを発表していくといったありふれすぎた内容であった。俺の前の人が缶入りのコーンスープのコーンを一粒も残さずに飲めるというあまり役に立ちそうにないがなんとなくほしいと思えてしまった特技を言っただけでなく披露までしていた。いつの間にその缶を用意したんだ。お前。そしてやっと俺の番が来た。「鶴屋 裕太郎です。好きなプロ野球の球団は広島東洋カープです。よろしくお願いします。」まあ当たり障りのない挨拶だろう。野球部に入ると思われたかもしれんが俺にはその気はない。観戦するのは好きだが実際にプレーするのはあまり好きではない。一応プレーできるのだがな。そして、全員の自己紹介が終わったところで新入生には知らされていない一大イベントが始まった。


 校内百人一首大会 in 春の陣 と題された唐突に始まったこの大会。源平合戦ではなく乱取り形式でおこなわれるため最終的に一番多く枚数をとった人が勝利になる。しかも次のステージへと行くことができる。学年別で開催されるトーナメント戦なのだが学年優勝者は上の学年と対戦することになる。うまいこと勝ち上がってしまうと最終的に高校3年生の先輩と戦うことになる。めんどくさいの一言である。しかし大会などは手を抜かないと自分の信条にしてしまっている俺は1回戦で驚異の76枚をとった。1年1組でのあだ名が1日で百人一首ガチ勢になってしまったけどな。結果はこんな感じになってしまった。そこまで強いわけでもないのに。

 2回戦(対クラス1決定戦)74枚。3回戦(対学年代表戦)57枚。4回戦(対2年生代表者)53枚。5回戦(対3年生代表者)50枚。

 

 ということで同一順位のため優勝者が2人になってしまった。やれやれ。百人一首の鶴屋という名前が着せられてしまった。しかもこの状況17年ぶりの快挙らしく担任からも長話の校長からも自慢の長話で褒められた。ほかの生徒が4時くらいで帰っていったのに対して俺は6時まで学校に残らされた。誰か何とかしてくれ、ながばなし。


 そんな感じで入学式の日は終わったのだった。

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