第2話

 「奈純、来てないのかぁ……。やっぱり何かあったんじゃない? 高校卒業してから、連絡、つかなくなったし……。」


 陽とは保育園の時から、光紀とは小学校の時から、明音とは高校の時からの友人である秦奈純。仲の良い四人組だったが、高校卒業と同時に彼女からの連絡が途絶えた。いくら連絡しようとしても、電話番号、メールアドレス、どちらも現在使われていない。


 何も言わずに消えてしまった奈純を、一番気にしているのは明音だった。

 底抜けに明るい明音と、物静かな奈純では相性が悪いように見られていたが、明音は意外と空気が読めるし、奈純もがなければ明るい性格だった。クラスメイトは不思議がっていたが、陽と光紀は二人が仲良くなったのは当然だと感じていた。


 そう、仲が良かったはず、なのだ。それなのに、何の前触れもなく音信不通。同窓会になら来ているかも……、という淡い希望を胸に抱いて三人は今夜、ここに来たというのに会うことも叶わず。もう八方塞がりだ。


 「直接言いたかったんだけどな……。」

 「言う? 何を?」

 ぽつりと溢された陽の言葉に、鋭く反応したのは明音だ。全員もう二十七になる。この歳になって直接言いたい大切なことなど、よっぽどの昇進か、はたまた結婚だ。実質一つしか答えのない二択。


 仲の良い友人同士なら大騒ぎで祝福したっておかしくはない報告だが、明音がこうも突っかかるのにも理由がある。高校時代、何度もどかしさを覚えたか数えきれない程に、陽と奈純の両片思いを応援していたからだ。奥手すぎて全く進展しないままに卒業してしまい、奈純との連絡が途絶えたことで終わった二人の恋。


 少しでも気持ちが残っているなら応援したいと、明音は願っていたというのに。陽の口から出た相手の子の名前は、もちろん奈純ではなかった。

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