「私達は
だから燃え尽きるように灰になって、世界の一部に
そう
地平線の近くの雲が、
それがあまりにも
星が輝く群青の世界に、だんだんと重なる桃色のカーテン。
別れを
私は
その反対側の手を握って側に立っていたユードが、そんな私を引き寄せた。私は口元を引き結んだまま、彼に少しだけ不満げに眉根を寄せてみせる。でも険しい顔を隠さないユードは、言葉に
「今なら皆さん油断して、
「そんなことをしたらユードはきっと、ヒトから
私の言葉を聞いた彼が、目を大きく見開いて言葉を無くして押し黙る。
見つめ合ったまま視線をユードと同じにした私は、彼の大きな手を包み込んだ。そのままじっと
ああ。
何てきれいな
それが私と同じ灰色になってしまうなんて、
どうして耐えられることができるでしょう?
貴方が神父として生きることに救いと
それを取り上げてしまうなんて。
「愛しているわ、ユード」
まるで洗礼の儀式のように。
彼の額に口づけを。
「たとえ貴方が、私を愛さないと知っていても」
彼の
地平線がキラキラと輝きだし、燃えるような空の色が私を包む。
「私はずっと、夜明けを貴方と見たかった」
その音は風に乗って、遥か遠くまで染み渡っていった。
私に気がついた町のヒトが、
「僕は、あなたも助けたいんだ、エヴァ!」
全てをかき消すような音に、歯を食いしばりながらユードは叫ぶ。ヒトの耳では、ここにいるだけでも
「ユードは優しすぎるのよ。だから私なんかに好かれてしまうの。貴方の愛は神に向けられているとわかっていても、どうしても……諦められなかった……」
私の口元を見ていたユードの瞳に、微かに哀しみの色が宿る。
それが彼の答えだと、私はとうに知っていたの。
神父サマとして生きる彼は、絶対に
「どうせなら、私はユードに退治されたい。そうしたら、貴方の心を私が一番
空に金色が一筋、流れる。
私は彼を力一杯、突き飛ばすことでその場に
その反動で、私は夜明けの空へと踊り出す。
彼から奪った
「
射し込むような陽の光に、全身が焼かれて崩れる感覚に襲われても。
それでも最期の瞬間まで、ユードから目を離したくはなかった。
「愛しているわ」
その言葉すら、燃えて流れて、消えていく。
彼の伸ばした腕の奥で、揺れる瞳に映し出された自分の泣き顔は、彼と一緒。
彼の
「愛しているわ。だから、ごめんね」
朝日が照らした瞬間に、目の前で、エヴァは風に溶けた。
その泣き顔にひざから力が抜け落ちて、彼女を救うことが出来なかった両手で、強く鐘塔の手すりを
「好きだと伝えてしまったら、君が悲しむと思ったんだ」
この教会に配属された日に、月の光に満たされた教会で
『
そう言いきってみせたエヴァは、僕には
(神父としてあり続ける僕を、君は望んでくれていたから)
切れてしまった十字架の鎖を握りしめながら、彼女の最期を胸に刻む。目を
光に誘われ顔を上げると、彼女が望んだ朝焼けの空。
金の帯が射すように、空の世界を塗り替える。
その消え行く星たちに、自分と彼女の願いを祈った。
「あなたがそれを願うなら、僕は必ず叶えてみせる」
自分を迎えに来た人々が、鐘塔の下で集まって口々に自分の無事を喜んだ。
だが遠巻きに見てくる者たちは自分に疑いの眼差しを向けて、糾弾の機会をうかがっているように見える。その者たちの足元には、エヴァの最期を共にした十字架がポツンと転がっていた。それを確認して周りの人々に
その十字架を指差して。
狂おしいほどの哀しみを心の中で押さえつけ、
いつかまたこの場所で、会える時を迎えるために。
「吸血鬼は、僕が倒しました」
ー完ー
夜明けの星に約束を 織香 @oruka-yuno
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