第6話
5階層に降りてきてしばらく進んで行いると短い横道の袋小路で身を隠すお腹を空かせた女性と遭遇した。俺は手持ちの
「そこに立ってると危ないんで、こっちに来て下さい。」
と、手招きしてくる。
何でもモンスターの類いはこの横道に目もくれず通路を進んで行くため安全とのことだ。正直あまり信じられなかったが、彼女が奥から出てくる気配はなかったので、俺は取り敢えず彼女の近くまで移動して食料と飲み物を手渡した。彼女が食事を取っている間、モンスターが目の前の通路を横切ることがあったが本当にこちらに気づく様子はなかった。
「あの、ありがとうございます。食べ物を分けて頂いて」
数分で食事を終えると彼女からそう声を掛けられそちらに目を向ける、見た目はロングの黒髪ぱっつんで眼鏡を掛けていて、学生服を着ていて学生鞄を肩にかけている様子から高校生の様だが、どこか大人びている印象もある。
「自己紹介がまだでしたね、私は
「あぁ、俺は」
「伊藤晶さんですよね?」
こちらも自己紹介をしようとすると、突然自分の名前を言い当てられ呆気に取られてしまう、そんな俺に様子を見た三木さんと名乗った彼女は、名前を言い当てたトリックを教えてくれた。
「すみません驚かせてしまって、今のは私のスキルでステータスとかを見ることができるんです。失礼とは思いましたが、少し伊藤さんのステータスを見せてもらいました。」
なるほど、ラノベとかで見る鑑定みたいなのか、まあ、こんな場所で見ず知らずの男と二人きりじゃそれくらい警戒しても仕方ないか。
「いや、別にいいですよ、それよりスキルが使えたんですね」
「はい、ここに来るまでに私の他に三人いたんですがその時にステータスが解放されて」
「他にも誰かいたんですか? まさかもう……」
他にも人がいた事にも驚いたがここには俺と彼女だけしかいない。
「いえ、死んではいないと思います、ただ三人は先に行ってしまって」
「一人で取り残されたと、一体どうして?」
話を聞くと元々は上を目指して四人で行動していた所、下の階に降りた事で自分たちの行動に違和感を持った三木さんは引き返そうと提案したらしい、がその後何度か説得したものの話を聞いてはもらえず、三人とは別れたとのことだ。聞いた限りでは三木さんの提案は至極真っ当なものだ、それともその三人は俺みたいにレベルUPをが目的だったのか。
「伊藤さん良かったらもう一度ステータスを見せてもらいませんか? もちろん私のも見せるので」
そう言って自分のステータスを表示させるとそれをこちらに見せてくれる。ステータスの内容は他人でも見ることが出来るらしい、俺も自分のステータスを表示させて三木さんに見せて彼女のステータスを確認する。
--------------------------------------------------------
HP 48/ 48
MP 29/ 53
STR 15 (+5)
VIT 11 (+)
INT 14 (+)
AGI 10 (+)
DEX 12 (+)
LUC 17 (+)
*SP 4
ユニークスキル
<探偵>
スキル
<探偵(仮)の美学>
<マッピング>
<地球の加護>
装備
「警棒」
--------------------------------------------------------
あれ、俺より強くね、というか俺が弱いのか? もしかしてステータスを見せ合おうと言ったのは最初にステータスを確認して対して強くないと判断したからか? 何だこのLUCの差は‼
「伊藤さんのステータスには経験値が表示されてるんですね、もしかしてユニークスキルの影響ですか?」
俺がお互いのステータス差(一部)に驚愕していると、三木さんが質問をしてきた。言われてみると三木さんの方には経験値の表示はない。
「レベルに直接関係するスキルなんでそうかも知れないですね。三木さんがさっき使ったスキルはこの<探偵>って奴ですか?」
そうしてお互いのステータスの内容を共有していく、話を聞くとこんな感じだ。
────────────────────
ユニークスキル
<探偵>
『MPを消費して不明な物事の解明しアーカイブする』『MPを消費してスキルによる偽装を看破する』『弱点属性のダメージ倍率UP』
スキル
<探偵(仮)の美学>
『一度受けた攻撃、状態異常に対して一時的な耐性を得る』
<マッピング>
『自身の周囲をオートで記録する』
────────────────────
三木さんのスキルはわりと探索寄りのスキルのようだ、特に<マッピング>はこの状況では喉から手が出るほど欲しいスキルに思える、そう考えると三木さんと別れた三人の行動に少し異常な気もする。それとどうやらユニークスキル<探偵>は鑑定スキルを含めた複合スキルの様だ、そんな話をしている時だった。
「伊藤さん今言った、複合スキルってなんです?」
「複数のスキルを併せ持つスキルの事ですよ、三木さんの<探偵>とかまさにそうじゃないですか」
俺がそう答えると、三木さんは少し考えた
「伊藤さんは他にもそういうスキルを知ってるんですか?」
「ユニークスキルを選ぶ時のそういうスキルがあったんですよ」
そう言って俺が見た他のユニークスキルの事を話す。
────────────────────
ユニークスキル
<無責任>
『あらゆる状況下における肉体的、精神的重圧の無効化』、『精神系スキルの一部無効化』、『自身の言動に対する深刻な信用の低下』
<自己暗示>
『相手のスキルをこのスキルと同じか、以下のスキルLvで使用できる』、『スキルLvに応じてスキルをストックする:0/2』、『スキルLvに応じて自身ステータスの一部を改竄かいざんする』
────────────────────
三木さんは俺の話を聞くとまた何かを考え始めた。
そして「一つ仮説があるんですが」と前置きしてこう言った。
「さっき私はこの階に降りて来てから自分たちの行動に違和感を感じたと話ましたよね、そして一緒に行動に行動していた人達と別れてしまったと、そしてここからは私の仮説なんですがこのにいる人やモンスターたちは暗示か何かの精神攻撃を受けているんじゃないでしょうか?」
三木さんの考えはこうだ、
このダンジョンにいる人やモンスターは暗示が掛けられており、その暗示の内容は『下の階に進む』というもの。
途中で別れた三人も通路を通り過ぎるモンスターもそして俺もみんな同じ方から来て同じ方に通り過ぎていくのも、皆同じところ(下への階段)を目指しいるからということ。
そして三木さん自身がそれに違和感を感じ抵抗できているのが自分のスキルにある<探偵(仮)の美学>にある『一時的な耐性の獲得』によるものという事だ。
正直自分では実感は全くないがさっき考えていた三木さんと一緒だった三人の行動にも、ここに来るまでの敵にほぼ全て後ろを取れていたのも納得はいく。
「そうすると、適当に行動したり自分で考えたつもりで行動しようとすると、無意識の内に下に向かってしまうってことですか?」
「そうだと思います。ていうか信じてくれるんですか?」
「まあ、話の筋は通ってますし」
俺はここに来るまでの事(子供の事は伏せて置いたが)を三木さんに話した。
「なるほど、確かにみんな同じ方向に移動していたらそうなりますよね」
三木さんはそう言って納得していた。
しかしそうなると自力での脱出が困惑という事になる。
仮説道理なら今この場で正常な判断が出来ているのは三木さんだけという事になる、俺は上を目指そうとしても無意識に下へ降りる道に行ってしまう。
今から三木さんと一緒に上を目指しても、一緒だったという三人同様途中で別れてしまうかも……とそこまで考えたとこれで一つ思いついた事を口にする。
「三木さんが先導してくれれば上を目指せるんですよね」
「でも伊藤さんは無意識に下に行こうとするんじゃ」
「俺が何も考えなければ、意識も無意識も関係なくなりませんか、ただ三木さんに付いて行って出くわしたモンスターを排除する。あとは全部三木さんに丸投げになっちゃいますけど」
そこまで言うと三木さんは少し驚いた様な表情をしていた。
さすがに無謀だった。
「分かりました。それで行きましょう」
「いいんですか?」
「ここで立ち止まっててもいずれは暗示への耐性が切れて下へ向かってしまうかもしれないんです。なら今動くしかありません」
どうやら三木さんは覚悟が決まったらしい。
そうして俺と三木さんは立ち上がった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます