第4話
俺は、階段の前で立ち止まる、一応、最初にいた場所が通路の真ん中だったので、進む先は二分の一で入口か出口に通じてるだろうと考えてはいたが、俺は出口の方を選んだらしい。
これもLUC 0 の影響なのか、ここに来るまでほとんど一本道だったので、戻る分には、道を間違える心配はないのが、唯一の救いだが。
立ち止まってても仕方ないし、引き返すか...でもやっぱり面倒くさいなぁとか考えてると、ふと別の考えが
そういえば、あと一体モンスターを倒せば、レベルUPできそうなのだ、そうすればガチャが回せる。どうやら、俺が手に入れた<レベルガチャ>は、Lv1だと使えないらしく、まだこの力を試せてはいなかった。
このまま来た道を戻っても、モンスターがいないは、分かっているし、それなら下に降りて一体だけ倒す、というのも有りなのでは、と
せっかくスキルなんて物を手にしたのにそれを使えていないし、とそこまで考えて気づく、
「さっきから戻らない理由ばっかり考えてないか?」
そう、普通は引き返す、ユニークスキルだって他に使えそうなのはあったのに、ここからの脱出に直ぐにでも使えそうだという理由で選んだんだ。なのに下へと降りる階段を見つけてから、いつの間にか、気持ちは下へ降りる方に傾いているようで自分でも正直驚いたのだが、
「まぁ、考え過ぎか、」
そして、俺は、戻る分には道に迷う心配もないし、どうせ一体倒すだけだし、などと思いながら、自ら下へと降りていくのだった。
◇ ◆ ◇
階段を下りて下の階に到着すると、そこは少し広い部屋のようで正面には先へと続く道があった。とりあえず、今出てきた階段の上の方に目をやると、そこには”Ⅳ”と刻まれており、やはり、自分が3階から4階に降りてきたことがわかる。
とりあえず近くにモンスターはいないようなので先に進むことにする、そして部屋から進んでしばらくすると、新しいモンスターと出くわした。3階で戦った芋虫とは違いそこまで大きくはなくニワトリくらいの大きさだが、
「どう見てもヒヨコだな?」
黄色い羽毛でサッカー大のヒヨコがこちらに背中を向けている、本当にモンスター
だよな?
考えても仕方がないので、後ろから近づいてメイス下からスイングする、ヒヨコは「ピィー⁉」と鳴きながら吹っ飛び壁にぶつかると、バウンドしてこちらに跳ね返ってきたので、俺はすかさず壁に向かってヒヨコをシュートする、そんなことを二度、三度と繰り替えすと、ヒヨコは芋虫同様に光の粒になって消滅した。
どうしよう、すこし心が痛い...
ピコンッ!
おっと、どうやら今のでレベルが上がったらしい、早速ステータスを確認してみる。
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LIMIT:15
HP 21/ 27
MP 19/ 19
STR 7 (+)
VIT 8 (+)
INT 3 (+)
AGI 6 (-1)
DEX 9 (+)
LUC 0 (+)
*SP 4*
ユニークスキル
<レベルガチャ>(0/100)
スキル
<EXPリミット>
<地球の加護>
装備
『鉄の鈍器』
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レベルUPにより各ステータスがすべて1ずつ上がっていた。
「HPとMPは上がった感じするけど、他の変化が微妙すぎる」
それにEXPが11→18に変化していた。
あのヒヨコ、3階層の芋虫よりも経験値上なのか⁉
正直芋虫の方が糸飛ばしてきたり、全然強そうだったのにと、そこまで確認してヒヨコが消滅した方を見ると、
「!!」
そこにはさっきまでそこになかった青いリンゴと透明な小瓶が落ちていた。
「リンゴだよな?」
真っ先に目がいくのはどう見てもリンゴにしか見えないそれだ、やっぱりドロップアイテムが存在するらしい、問題これが食べられるかどうかだが、
リンゴを拾い上げ、軽く表面を拭いてから、恐る恐る口にする。
「普通だ...」
味は普通にリンゴだった、正直、毒の有無までは分からないので、本当に普通のリンゴという事しか分からないが、”モンスターを倒せば食料が手に入る”という事実にかなり気持ちが楽になった気がした。
それからリンゴを食べながらもうひとつのドロップアイテムを手に取って確認する、小瓶には赤い液体が入っており、まるでゲームに出てくる回復アイテムのようだ。
とりあえずリンゴを完食し、見た目以上のことはわからない小瓶は適当にポケットに突っ込んで、先に進みだす。
モンスターを倒して食料が手に入るなら急いで<レベルガチャ>を使う必要はないかもな、SP《ステータスポイント》も今のところ使わなくても平気そうだし、必要な時まで取っておいていいかな。
そうして進んで行くと数分おきにヒヨコと出くわし、三体ほど倒したことで俺のEXPは39/45にまで上がっていた、あと一体でまたレベルできるな、と考えていると目の前に見慣れたものが転がっていた。
なんでこんなところにバイクが転がってるんだ?そう思いながら近づくと、いかにも食欲をそそるうまそうな匂いがしてくる。転がっていたのは、宅配ピザの3輪バイクだった。自分以外にもここに人がいるのかと周りを見渡してみるが人の姿はない。
色々気になるけど、まずはバイクを起こして、リヤ部分のボックスの中を確認すると中には配達中だったであろうピザが入っていた。
◇ ◆ ◇
まさかダンジョンの中で宅配ピザが食べられるとは思っていなかった。昼間に食事をしてから、ダンジョンで目覚めてここに来るまでに2時間近く歩いていたので、ピザ一枚はすぐに完食してしまったがお陰で腹は膨れた。
嬉しい事にバイクには他にもゼロカロリーのコーラが二本あり、飲み物まで手に入ってしまった。そしてバイクの方は残念ながらエンジンが掛からなかったので置いていくことにする。
しかし、ここに来て自分以外に他にも人がいる可能性が出てきた。
目が覚めた時、俺の周囲には眠る前に周りにあった私物が散乱していた、おそらく周囲の物ごと、このダンジョンに転移したんだろう、そしてそれは他の場所でも起きていたと、先ほどのバイクのナンバーは地元ものだったのでわりと近くで同じようにな事が起きていた事になる。ピザもまだ冷め切ってはいなかったので転移されたタイミングは俺と同じだろう。
そんなことを考えながらダンジョンを進んでいると先の方から、むせるような鉄の臭いが漂ってくる、途端に目の前の現実に引き戻される。
ダンジョンのモンスターは倒されると跡形もなく消滅する、モンスター同士で争うような事があるならともかく、そうじゃなければ...
そこまで考えて、その光景が目に入った。
そいつは、ファンタジーでは定番のゴブリンような見た目をしていた、背格好はまるで子供の様で、それがこちらに背を向けてうんこ座りしていた。
なんで俺が出会うモンスターはみんなして後ろを向いてるんだ?そうして気づかれないようにゆっくりと近づくと、ゴブリンの前にあるものが目に入る。
それは、血だまりに横たわる子供の体だった、腹からは内臓らしきものが出ていて、ゴブリン方からは「くちゃくちゃ」と音が聞こえてくる。
俺は何も考えられなくなりながらもステータスを呼び出し使っていなかったSP
を全てSTRに割り振ると、ゴブリンの背後から全力でメイスを振り下ろした。
ゴブリンは絶叫し頭を押さえながら子供の体の上に倒れこむ、
「どけ!!」
声を上げながらこっちに向いたケツを蹴り上げると、さらに転がるゴブリンを追撃する、手にしたメイスで何度も殴りつけるといつの間にか体中にゴブリンの返り血が付いていた、俺が返り血に気を取られていると左足の太ももから激痛が走った。
見ると太ももにはナイフが突き立てられており、そのナイフを握るゴブリンを見るとそいつは「ニチャァ」と笑っていた。
俺はその顔目掛けてメイス振り下ろした。そして、ゴブリンは消滅した。
ピコンッ!
腰が抜けたように地面座り込み一息ついて、血だまりの方を見ると子供の体が目に入る。そして、先ほどのゴブリンの姿がフラッシュバックし子供の姿がと重なると...
「…おえっ…オロロォォ」
盛大に嘔吐した。
しばらく動けないでいると、小瓶のことを思いだす、ポケットから取り出し、とりあえず半分飲んで、もう半分は太ももの傷口に掛けると傷口が塞がっていく。
本当にゲームみたいだと、思いながらゆっくりと立ち上がる、
でもこれはゲームじゃないんだな。そう自分に言い聞かせながら子供の体の方に近寄る、このままに何もしないのも可哀想だと思ったが、してやれることは何もないことに気づき、せめてこれくらいはと、両手を合わせて祈る。
それから俺は最悪の気分のまま先へ進んだ。
この時俺には脱出するという意識はあっても引き返すという考えは欠片も持っていなかった
◇ ◆ ◇
ピコンッ!
『経験値を獲得したことにより、ステータスが解放されました』
『ユニークスキル<死霊使い>を獲得しました』
『スキル<下級眷属召喚>を獲得しました』
『スキル<状態異常耐性>を獲得しました』
『スキル<地球の加護>を獲得しました』
『ユニークスキル<死霊使い>が発動しました』
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HP 12/ 12
MP 0 / 29
STR 4 (+)
VIT 5 (+)
INT 12 (+4)
AGI 4 (+)
DEX 9 (+3)
LUC 23 (+)
*SP 3
ユニークスキル
<死霊使い>
『自身のLvに比例してMPとINTとDEXが上昇』、『魔法スキルの威力が上昇』、『魔法スキルの消費MP減少』、『HPが0になった時、一度だけMPをすべて消費して自身を蘇生する(0/1)』
スキル
<下級眷属召喚>
<状態異常耐性>
<地球の加護>
装備
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