第7話  リュウちゃん。


夜は、俺に抱かれていても、昼間のふたりは、客とウェイトレス。


俺は、ただの常連客。


ホールスタッフ達に、軽口をきく、常連客。



俺は、少し遅めの朝食をとるために、店の扉を開いた。


珍しくヒカルは、厨房に入っていたから、今日の俺の相手はリュウちゃんだ。



「おはよ」


「いらっさいまっせ〜」


リュウちゃんが、テーブルに水とおしぼりを置く。


え?


「ぢぢぃ、何食うか?」


「いきなり、ぢぢぃかよ…まぁ…モーニングね。アイスコーヒーで。」


一旦、さがり、厨房で、俺にまで聞こえる大きな声で、オーダーを通す。


「3卓、ぢぢぃのモーニング」


厨房の中から、ヒカルの爆笑が聞こえる。



「おまた〜。ぢぢぃ、ごゆっくり食えよ」

笑顔でテーブルへ置く。


「リュウちゃん…。俺、ぢぢぃだけど、ぢぢぃって名前じゃないよ」


「あいや〜!姐姐が、ぢぢぃだから、ぢぢぃ、呼べば、喜ぶ、言った」


ちっ!


俺は、リュウちゃんに、姐姐と呼ばれるヒカルに、心で舌打ちをした…。


しかし、悪気のまるでないリュウちゃんには、笑顔で言った。



「ぢぢぃって、日本では、おじぃさんをちょっと悪く言う時の呼び方だよ…。まぁ、俺には、ぢぢぃで良いけどね…」


「そでしたか、ぢぢぃ」


俺は、苦笑の中で、学習能力が高いのか、天然なのか、判断がつかないリュウちゃんが、俺を、ぢぢぃと呼ぶことを許していた…。



二十歳を過ぎたばかりで、日本へ来てまもないリュウちゃんは、可愛い性格の娘だ。


みんなに、悪い日本語を教えられて、それを使っても嫌悪感が無く、むしろ、微笑ましい。


明るく、ズケズケと話す性格も愛らしい。


モーニングを食べながら、リュウちゃんに話しかける。


「さっき、リュウちゃんの私服、見たけど可愛いね」


「しふく?」


「ユニホームに着替える前に着てた服よ」


「あぁ、あれ、安かたよ。上下、千円。‘しまむら’…安くて助かるよ」


「そっか…似合っていたよ…リュウちゃんは、スタイルいいよね〜」


「そなこと、無い無い。わたし、Aカップね。‘しまむら’ブラジャーも安いね


訊いてもないことまで、あっけらかんと、しゃべる。


「Aカップなんだ。まぁ、胸は大きさより、感度だからね」


ちょびっと、セクハラを入れてみる。


「かんど?わたし、喜んでないよ。小さい、悲しい。かんどは喜ぶことね」


感度と感動を間違えてる。

プッ…。


リュウちゃんは、Aカップの話をしていたからか、ユニホームの上から、しきりに、ブラジャーの位置を直しながら、尚も、俺に話す。


「この前、肩の紐、無いブラジャーで寝たよ。朝、起きたら、くるりと回って、背中のホックが前に来てた。だけど、ちゃんと、乳首隠して、ブラジャーしてた。あたし、ベルトでもブラジャー、おっけぃね」



ちょっと、はにかんだ、リュウちゃんで、俺は、大爆笑させてもらった…。

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