第4話  ヒカル

ヒカル…お前の名はヒカル…。


俺が、この店に、常連として来るようになって、かなりの日数が過ぎた。



店内では、ヒカルは実によく動く。


しかし、なんだか、頻繁にトイレへ行く。



「お前よぅ、便所ばっか行ってねえ?便所で隠れてメールだろ?彼か?」


「違うよ…今は別れて一人だよ。おちっこが近いんだよ…ポリポリ…」


「つか、尻を掻くな…って小便?たまにう○こもしてる?」


「うん…おなかも弱いんだ…」


「飲みすぎだろ?…お前、酒くせぇぞ」


「わかる?つい飲んじゃうだよね」


「飲むのはいいけど、注意しろよ。でもさぁ、今度一緒に飲むか?」


さりげなく誘ってみる。


「うん。いつでもいいよ!」


「じゃぁ、電話番とライン教えろ」


「やだね」



こいつは何かと俺に、最近、いじわるをする。



「連絡、とれねぇじゃんかよ!」


「でも…やだね…教えない」



 しかし、俺が帰る時に、メモをお前は渡した。


電話番号とラインID…。


夕方、5時過ぎのお前が仕事を終えて、帰るくらいの時間に、俺はヒカル

に、俺の電話番を入れたラインを打つ。


すぐにヒカルからの返事。



“ぢぢぃだから教えたんだぞ。いままでお客にも…誰にも教えたことないんだからな”


俺は今度は電話した。



『もしもし…俺だよ。もしかして、俺に惚れたか?』


『ばかなのか?いきなり…』


『照れんなよ。もう店で、いっぱい話して、お互いのことは、よくわかってるだろ?俺はお前、大好きだぜ…俺の女になれよ…』


『ぢぢぃ…やっぱり、あほや…』



その夜、お前からラインが届く。


“信じていいですか?優しくしてくれますか?ほんとに愛してくれますか?”



俺はすぐに返事を打つ。


“当たり前だよ…俺はお前に出会えた…やっと俺はヒカルに出会えたから…後悔なんかさせられない…”




“信じるよ。あなたを信じます。”



 翌日、俺は、また、店へ行く。


出迎えたヒカルは、相変わらずの可愛い笑顔。


いつものテーブルにつき、ヒカルに言う。



「アイスコーヒー」


「やだね」



応えるお前は、またいじわるに戻って笑っていた…。

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