第3話  呼び名はぢぢぃ?


翌日になり、また、店へ行く。


あの、可愛いウェイトレスのいる店だ。


その日は、いつも開店早々に来る、臭い犬おじさんとのバッティングを避け、モーニングとランチのちょうど間くらいの中途半端な時間を選んだ。



店に入るや否や、例のウェイトレスのおねぇちゃんは、俺をこの前と同じ席へ案内した。



「今日も来る気がして、席とっておいたんだぁ」


可愛いことを言う。



「犬、来た?」


「来た来た…やんなっちゃうよ〜」


「プッ…」


「あぁ〜笑うなよぅ」


彼女は、すっかり俺に打ち解けて、まるで友達感覚のようで、俺は非常に嬉しかった。


店内は、結構客が入っていて、彼女の他にもうひとりのルームスタッフが動いていた。


「忙しい?」


「いや、まだそうでもないんよ。ランチに…ってか、うちはティータイムがめっちゃ忙しいから…」


「そっか〜、つか、そう言えば俺にオーダー取れよ」


「忘れてた… ポリポリ…」


「しょうがないなぁ…」


「でもコーヒーでしょ?」


「うん。アイス、ブラックで」


「らぢゃ!」



アイスコーヒーを運んでくると、彼女は、いつもの立ち位置から一歩俺に近づいて立つ。


隣にもテーブルはあり、客もいるのだが、小声なら、ふたりの会話は気づかれない。


客席を飛び回りながら、わずかな時間があくと、俺の脇にきて、俺と会話する。


他の常連客への好き嫌いや、常連客の奇妙な行動などを俺に話す。


俺は俺で、たわいもない、俺の書き綴る小説の話や仕事の話で笑わせていた。



「馬鹿だなぁ…お前、客のこと、違う客の俺に話しちゃまずいでしょ…?」



数日後には、彼女を俺は、お前と呼んでいた。


「大丈夫よ。話したって誰にも言わないでしょ?」


「あたぼうよ!!俺はぢぢぃだけど、内緒話を他のやつに言うわけない」


「あはっ…ぢぢぃかぁ…」


それからは、愛称のつもりか?お前は俺を、ぢぢぃと呼ぶようになった。



「ぢぢぃかよう…まぁ、ぢぢぃだから、いいけどな。でも、いちお、客だぜ」


「ぢぢぃは客だと思ってないから…」


お前は、ウインクをしたつもりなのか、ウインクを出来ずに、両目をつぶって、俺に満面の笑みを見せた…。

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