【四巡目】それぞれの思惑 (教会side)

事前情報 

◯魔力について。

 一般的に穢や魔女、魔人が持つ魔力と呼ばれるその力は、神話の時代に原始精霊が人間に分け与えた精霊の力であった。

 教会はとある目的の為にその力を得ようとしていた。既に精霊の力を得る段階は突破していた。(どうやって?)次の段階において大きな課題となるのが、それらの力の制御である。

しかし常人にはそれができなかった為、教会は力を制御できる器を探している。


◯サディトリアル家について。

 サディトリアル家が毎回ルスを見つけられたのは、魔人のおかげ。

彼は例の原初の魔女がいた時代から生きている。だが、あのセリシアン王国建国史上最も悲惨な事件に巻き込まれて体が損傷し、自由に動けなくなってしまった。

サディトリアルとは血の誓約をむすんだ。サディトリアル家は永久に自分を生かすこと。そのかわりに、彼は自分の持つ魔法(未来予知系)をサディトリアル家のために使う。血の誓約の効果範囲は、サディトリアル家の血を引く人間全て。

穢を嫌う教会派筆頭が魔人を飼ってていいの?

いいんだよ。だって、未来予知なんておいしいもの、みすみす手放しはしないだろう?この力を利用できれば、サディトリアルの栄華は約束されたようなものなのだから。


────────────────────────


大聖堂にて。

会合は通常、大聖堂の隣に建てられた教会の本部となる建物の広間で行われるのだが、今回は何故か大聖堂の地下深くに作られた部屋に召集された。

「精霊にお仕えする尊き皆様方、このような場所にご足労頂き恐縮でございます。」

教皇や大司祭が全員集まって円卓に着席すると、サディトリアル家当主が立ち上がって恭しく頭を下げた。

おもてをあげよ。」

教皇は着席するよう手で伝えた。

そして全員いることを確認してから、サディトリアル家当主に言う。

「サディトリアルよ、此度の会合場所の変更はそなたの申し出によるものだ。その申し出の理由を述べよ。」

サディトリアルは両手を組んだ。

「どうやら最近私の周りを嗅ぎ回るネズミがおりましてね、どうやらこの会合を狙っているようなのです。皆様の安全を確保し、同時にそのネズミを駆除する為にこのような措置を取らせて頂きました。」

教皇はスッと目を細めた。

「ほう……そのネズミとは一体?」


「空間を操る魔女、イルニア。」


魔女の名を明かした途端にざわつく。

空間の魔女イルニア。王家が飼っている、空間の魔法を操る一族の末裔。十数年前、いかづちの魔女の手引きによって逃げられ、その後行方不明となった魔女だ。

「では、今ここで会合をするのは危ないのでは……。」

一人の大司祭が焦りぎみに言う。

当主は背もたれに身を預け、ゆったりと言った。

「いいえ、何も問題ございません。教皇様のご協力により、今頃あの忌々しき魔女は罠に嵌まっていることでしょう。」

余裕を見せる当主に教皇が問う。

「して、サディトリアル。何故その襲撃がわかったのだ?それも、どの魔女かまで。」

当主は姿勢を正し、真っ直ぐに教皇と目を合わせる。

相手を試すような視線だった。

一呼吸置き、当主は告げる。

「それは、我々サディトリアル家が代々飼っている魔人の能力にございます。」

「なんと……!!」

周囲は先程よりも大きくざわめいた。


大司祭はこぞってサディトリアル家当主を非難するが、本人は気にせず、会合の本題に入る。


本題 精霊の力の制御する器をどう手に入れるか。


そこでサディトリアル家は、自分の所有する魔人を教会の欲する器にしないかと提案する。


(それぞれの思惑)

サディトリアル家

教会に恩を売って精霊の力を手に入れたい。

魔人は手放したくない為、魔人が完全に教会の所有物となるのは避けたい。


教会

力を制御できる器が欲しい。サディトリアル家には武力の面で負けており、これ以上力をつけてほしくない為あまり精霊の力の研究の中枢にいてほしくない。


魔人

血の誓約が守られるのであれば器になってやっても良い。

「装置」には保存の魔法が組み込まれているため、それが壊されない限り消滅しない。

だが、どちらかというと「装置」に組み込まれた方が自分を命懸けで守る人間が増えてくれるので好都合。もっとも、力の制御は面倒だが。


三巡目まででもこの会合は行われ、全ての時間軸で提案は承認された。

最終的に今回も承認された。

(五巡目もそうなる。)

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