【閑話】イルニアの身の上

空間を操る魔法を使う一族の末裔として私は生まれた。

この一族は代々セリシアン王家によって、城の地下に囚われていた。

私をそこから救い出したのは、いかづちの魔女だった。彼女は私達に、山奥の家を用意してくれた。

地下牢とは全く違う生活に戸惑いながらも、何とか暮らしていった。

雷の魔女は親代わりとして生活の手伝いをしてくれるようになった。しばらくして私に魔女の力が目覚めると、魔法についても教えてくれるようになった。

また、私は自分の一族についても詳しく教えられた。

遥か昔、私の先祖はより強い力とその継承を求めて精霊の力を研究していた。その研究は何代にも渡って行われ、ついに空間を操る魔法を生み出してその力を己の子孫に遺伝させることに成功した。

しかし、その力の危険性からその一族は

家名を剥奪、さらにセリシアン城の地下に投獄された。

……何故殺されなかったのか?それはその力が脅威となる一方で、王家が有事の際の切り札として利用しようとしたからである。王家は一族を捕えた際、命までは奪わない代わりにセリシアン王城から一定の距離以上は離れられないよう血の誓約を交わした。この誓約の効果範囲は一族の血が流れている人全員。

(「命を奪わない」というのは、王家が、という意味。だから教会がイルニアを殺しても王家に被害は出ない。)

こうして一族は表向きでは処刑されたと伝えられ、実際は王家による飼い殺しとなった。

しかし時が経つにつれて魔力を持って生まれる子供が減少し、私が膨大な魔力を持って生まれたのは奇跡に近かったらしい。


雷の魔女のもとで暮らして六年が過ぎたある日、一人前だと認められた。

祝いとして今まで住んでいた家を譲り受け、私は独りになった。

寂しさは、時間が経つと共に薄れていった。

同じ日を繰り返し、二十三歳の冬に、あの子を見つけた。

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