六話 『真美ちゃんとの相談』

私――桜田菜乃花というのはどうしようもなく優柔不断だ。例えばファミレスとかに入ってメニューを見たとする。何を食べようか悩むことはよくあるだろう。だが、私の場合どの料理にも決められずに時間だけが過ぎていくタイプである。



結局、お姉ちゃんと一緒のものにするか、適当に選ぶことが多かった。ファミレスのメニューでさえ人任せな私が、先輩二人に告白され、どちらかを選ぶことなどできるわけがない。



未だに夢を見ているんじゃないかと思ってしまうぐらいに私の頭の中は混乱状態だ。でも、先輩達は私のことを好きだと言った。



二人とも高嶺の花で、私なんかが隣に立っていたら見劣りする。でも、二人はそれでも私を選んだ。



だから私は二人の好意に報いなきゃいけないし、選ばなきゃ行けない。私なりに考えて……



「いや、でもなぁ……」



選択肢は二人のどちらかを取るか、2人とも振るか、二人とも手に入れる

のか、の3つである。しかしどれも私には難しい選択である。二人とも手に入れるだなんて論外。



そんなの浮気じゃないか!という気持ちと、でもそれなら二人とも傷つかないし、もし拒否しても私に冷めて別れるという展開になるのでは?と思うのだ。



そんなことを思っているとピロンとLINEが来た。送り主は……



「あ、真美ちゃん……」



白鳥真美。中学の頃の部活の後輩であり彼女もまた文芸部の一員だった。真美ちゃんは天使のような容姿をしている。そんな真美ちゃんにはファンクラブというものがあって常にみんなの中心人物だった。



そんな真美ちゃんだがファンクラブというものを鬱陶しく思っていたようだ。そんなある時ファンクラブの一人が部室にまで入ってきて私の小説を馬鹿にしたことがあった。



その時は真美ちゃんが私を庇ってくれたし、『私は面白いと思います。先輩の小説』と言ってくれたのでその時のショックは小さかった。



それからは何かと交流があり、受験では私の高校を第一志望としているらしい。まぁ、ここの高校は県内でも沢山学科もあるし、カリキュラムも多いのでレベルは高いしね。



そんなことを思いながらLINEを開くと、



『先輩、今電話できますか?』



と書かれていた。丁度いいタイミングだ。私はOKマークを返信してスマホを閉じた。

すると三分後ぐらいに電話が掛かってきた。



「あ、もしもし……?」



『菜乃花先輩……お久しぶりです。元気でしたか?』



「うん。元気だった。真美ちゃんは?」



『私も元気でした。ただ受験のこともあってそんな悠長なこと言ってられませんけど…』



真美ちゃんの声はとても落ち着く。透き通るような綺麗で可愛い声しているし。



『……先輩どうかしました?声……暗い気がしますけど……悩みがあるなら相談に乗りますよ!』



え?!私そんなに分かりやすい!?って、そんなことはどうでもいい!真美ちゃん、今受験なのに相談するの……?!



『あ、先輩、私に遠慮してるでしょ?私、先輩ならいくらでも相談に乗りますよ。……こんなこと、先輩だから言えるんですよ。だから……教えてください』



そんな真剣な声で言われたら言わざるおえない……。それに真美ちゃんなら信頼も置けるし……私は決心して深呼吸をしながら、



「じ、実はね……」



私は真美ちゃんに話した。

二人の先輩から告白されたこと。どちらを選ぶべきなのか分からないこと。そして……



『成程。つまり、先輩はその二人を傷つけたくないと……そう思ってるんですね?』



「うん。そう……私のことが好きな理由は聞いたんだけどさ……正直言うと分からないんだよね……私が好きな理由はわかったけど……私ってそんなに立派な人間じゃないし……付き合ったらきっと幻滅されるんじゃないかと思ってしまう」



それに、私みたいな地味な子が彼女たちの横に立っているだけで見劣りしてしまう。だから私じゃ釣り合わないんだよ。

そんなことを思っていると電話の向こう側でため息をつく音が聞こえた。

あれ?私変なこと言ったかな? と思っていると……



『菜乃花先輩は自己評価が低いです。こんなのじゃその先輩さん達に失礼ですよ。だって、その先輩さん達は……好きだって言ってくれたんでしょう?なら、それを信用するべきです。菜乃花先輩がどう答えるかはともかくとして、自分の気持ちを伝えるのが一番大事なんじゃないですか?』



「真美ちゃん……」



やっぱり真美ちゃんはすごい。私なんかより全然しっかりしていて、考えを持っている。私とは大違いだ。

でも……そうだよね。何もしないで諦めるのは嫌だし、何よりも相手に失礼だもんね。



ありがとう、真美ちゃん。私、頑張ってみるよ。それから少し雑談をして電話を終えた。

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