最終話 『返事』
答えは出た。お姉ちゃんに相談し、真美ちゃんにも相談し、私は答えを決めたんだ。
そして私は今、先輩二人を待っている。大丈夫。もう答えを出したから、後悔はしないはず……!と思っていると、
「……菜乃花ちゃん……告白の返事が決まったって……」
「はい、決まりました。私なりに頑張って考えてみました」
そう言うと二人の顔が強張る。そうだよね。いきなり振られたと思った次の日に呼び出したらこうなるよね……でも私は覚悟決めたんだ。しっかり二人の目を見て伝えるんだ……!
「ここ最近……先輩達に告白されてから私はずっと悩んでました……正直に言えば凄く嬉しいんです。私みたいな地味で平凡で何も取り柄のない人間を選んでくれるなんて……本当に夢のようで……だけど……」
そこで私は一息置いて、二人に視線を合わせて言った。
「私、まだ先輩達のことまだそんなに知らないじゃないですか……だから、もっと色んなことを知ってからでも遅くないと思うんです。先輩達と一緒にいる時間は楽しいし。だからその……保留にさせてもらえませんか!」
……これが私の考えた結果。私が出した結論。二人が好きだっていう気持ちはあるけれど、まだまだお互いのことを知らなさすぎる。だから今は付き合えない。
だってこの選択が一番傷つくことがないし……卑怯だと言うこともわかっている。
これで嫌われるのなら別にいい。軽蔑されても仕方がないと思う。それだけの理由を私は言ってしまったのだから……でも、それでいいの。それが私の精一杯なのだから……
そんなことを思っていると、
「保留……そうよね、私告白なんて初めてで浮かれてたわ。菜乃花ちゃんのこと全然見てなかった……ごめんなさい……」
「私も。告白とかしたことなくて……自分のことで頭がいっぱいだったよ。菜乃花の気持ちとか考えれて無かったよ……本当に……本当に……ゴメン……!!」
二人とも涙を流していた。なんで!?ごめんとか謝って欲しい訳じゃ無いのに!ただ私は――。
「私はただ教えて欲しいだけなんです。どうして二人は私のことなんかが好きなんですか?」
「そ、それはこの前教えたでしょう?」
「はい。答えてくれました。でも、その理由がよくわからないんです。私、芯の強い人間じゃないし、どちらかと言えば弱いほうですし。それに、私は女神でも天使でもありません。私はただの……桜田菜乃花です」
そう、私は女神にも天使にもなれないしなる気もサラサラない。
「……菜乃花ちゃんは優しいし、真面目だし、何事にも真っ直ぐで、どんなことにも一生懸命になって……そういうところが好きなのだけど……一番は……笑顔かしらね。私、貴女の笑った顔を見ていると心が安らいで、元気が出るの」
え、そうなの!?そんなこと言われると照れるんだけど……!
「うん。私もそう思う。私、菜乃花と話すと元気になれるし。後、菜乃花は芯の強くない人間って言ったけど芯の強くない人間はもうとっくに文芸部を退部してると思うだけど」
いや、それは芯が強いというより……小説を書きたかっただけなんだけど。それに私には文芸部しか居場所が無かったし……。
「まぁ、菜乃花ちゃんの気持ちは分かったわ。確かに私たちはお互いのことをまだ知らない。けど、時間をかければ知ることが出来るし、知ってもらえるもの」
「だな、だからこそ、私たち今日からぐいぐいアピールしていくつもりだから覚悟しといてね?まぁ、今すぐ付き合いたいけど……そんな急かすわけにはいかないし……これからよろしくな」
……ん?何か話の流れおかしくないか……?そんな私の不安を他所に二人はくるりと私の方を振り返り、
「じゃ、私と奏で菜乃花ちゃんが何処が好きなのかまとめてくるわねー!」
「そうだな!多分2日ぐらいかかるだろうけど!」
ええ!?ちょっと待って!!そんなにかからないで!!!恥ずかしくて死ぬぅぅう……!私は必死に二人を止めようとするが二人の姿はもう見えてなくなっていた。
ああ本当に……。
「三角関係ってしんどい……」
私のつぶやきは虚しく宙へと消えた。
そしてその2日後先輩達に私の好きなところを沢山言われ、溺愛されて私が悶絶したのはまた別のお話である。
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