束の間の夢
「
「
「うぐっ……み……御鷹……もうやめよう! こんなことをする必要が、一体どこにある⁉」
「愛恋……愛恋……」
御鷹の動きが止まった。彼は腕が震えており、涙を流している状態だ。
「御……鷹……?」
「俺は……一体……」
この時、彼は
「愛恋、瑞葉……そして皆、本当にすまなかった。俺は……俺は! 俺は罪のないマグスを殺した! 俺には、アンタに信用される資格なんかなかったんだ!」
それは幸か不幸か、彼は暴走していた時の記憶を保持していた。愛恋は恐る恐る手を伸ばし、彼の背中を優しくさする。
「僕は……君を信じたい。これからも君と釣りをしたいし、星空を見ながら話したい」
「ダメだ……ダメなんだよ。俺はこの集落にいると、またアンタの仲間を殺してしまうかも知れない。俺は、ここに居ちゃいけない人間だ!」
「御鷹……」
「ごめん、愛恋……」
結局、御鷹はこの日をもって、マグスたちの集落を出ていくことにした。そんな彼の寂しそうな背中を、愛恋は悲哀の交じった眼差しで見送っていた。
*
その日の夜、リベリオン・マギの拠点には、一人の少女が姿を見せていた。青い髪をした少女――――
「
彼女の報告を聞き、
「アイツの敵は、ミーたちのはずだよん。許せないね……関係のないマグスを傷つけるなんて!」
彼に続き、
「ヒヒヒ……人間など、所詮そんなもの。束の間の夢は心地よかったかい? 瑞葉! ヒヒヒ……」
今回の件を受け、御鷹の印象は地の底まで落ちたようなものだ。
「ふむ……流鏑馬御鷹は我々の敵というわけだ。我らは組織を上げて、いずれあの男を処刑する。これは命令だ!」
彼らの中で、御鷹に対する猜疑心が募っていく。その中で唯一、何か裏があると判断している者もいる。
「……あの御鷹がそんなことをするわけがねぇだろ。あのお人好しな馬鹿は、筋金入りの本物ってモンだぜ? ありゃ、演技には見えねぇな」
「オゥ、カモン! 人間がそこまで、高尚な生き物なわけがないじゃん! 紅蓮ちゃんは、アイツを買いかぶりすぎだよん!」
「まあ、あくまでも一つの可能性だ。何か裏があることを疑い、奏美やドクター・マガミに目をつけておくことも、決して無益じゃねぇはずだ」
「ま、それもそうだけどね。アイツは馬鹿だし、騙されやすそうだし」
「……まあ、それには同意するぜ」
……御鷹を馬鹿だと思っているのは、二人ともだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます