再戦

 それは翌日のことである。御鷹みたか愛恋あれんにとある話を持ち掛ける。

「なあ愛恋……瑞葉みずはのことなんだが……」

「ん?」

「俺たちの集落で、アイツのことを匿ってやれないか?」

 そう提案した彼には、もちろん彼なりの考えがある。そして、愛恋はその考えをそれとなく察している。

「その必要がありそうだね。君の話を聞く限り、あの子は運命に弄ばれただけの普通の子供だ。リベリオン・マギで活動するより、ここで暮らした方が間違いなく幸せになれる」

「だろ? 俺もそう思ってたんだよ」

「それじゃ、さっそく……リベリオン・マギに乗り込むかい?」

「もちろんだ!」

 思い立ったが吉日だ。二人はすぐに支度を済ませ、集落を後にした。



 数時間後、御鷹たちは目的地に到着した。愛恋はペガサスに変身し、御鷹に指示を出す。

「せっかく今は僕がいるんだ。守りの堅い出入口から入らずに、最上階から飛び込むよ」

「助かるよ……愛恋! そうだ、そう言えば、アイツらはいつも、五階の会議室で話し合っているみたいだぞ」

「じゃあ、五階から忍び込もう」

「ああ、頼むぞ」

 御鷹はすぐに愛恋の背中にまたがった。愛恋は跳躍し、そのまま拠点の五階にまで飛翔する。そうして彼は壁を突き破り、拠点の五階へと飛び込んだ。



 二人の前に立ちはだかるのは、リベリオン・マギの幹部の一人――――五十嵐祐いがらしゆうだ。

「やれやれ……また壁を修復しないといけないじゃん。その前に、ミーたちの拠点に迷い込んだネズミを始末しないとね!」

 御鷹はこの男の強さを知っている。彼は愛恋の前に立ち、強気な発言をする。

「愛恋、先に行け。今の俺の体には、あらゆる植物性の毒に対する抗体が備わっている」

 一度治療を受けている彼には、勝算がある。一方で、治療を受けていない愛恋が植物性の毒に脅かされようものなら、命は保証されないだろう。

「わかった。ここは任せたよ、御鷹!」

「引き受けた!」

 ここからは、御鷹と祐の戦いだ。愛恋はその場から走り去り、瑞葉を探しに行く。当然、祐は猛毒という武器を封じられているも同然だが、それだけが彼の戦い方ではない。何しろ彼は、リベリオン・マギの幹部を担う男だ。

「毒さえ封じれば、ミーに勝てると思ってるのかい? 甘いよん」

 祐は地面から無数の木を生やし、頑丈な蔓を御鷹の両脚に絡ませる。

「……!」

 御鷹はメタルミストを剣に変形させ、その表面に電気をまとわせる。彼はそのまま剣を振り下ろし、木の蔓を切り落とす。次に彼が前方に目を遣ると、目と鼻の先には木刀が迫っている。御鷹はそれをかわすように仰け反り、そのまま後転して立ち上がる。例えこちらが血清を手にしていても、決して油断できる戦いではない。

「御鷹くん……だっけ? 仲間を見捨てて逃げるなら、今のうちだよん」

「それはどうかな。確かに、俺は一度、アンタに殺されかけてる。だけどそのおかげで、アンタの動きがわかってきた」

「言うねぇ。ま、ユーがそんなに言うのなら……もう少し本気を出しても良いかもね」

 祐の顔つきが変わった。彼は木の蔓で廊下を埋め尽くし、その一部を御鷹の体に巻き付けていく。

「くっ……」

「ウェーイ! さっきまでの威勢はどうしたんだい? ミーをもっと楽しませてよん!」

 木の蔓の表面から、針のような枝が生えてくる。御鷹の足下から滴る鮮血は、その枝が彼の体に突き刺さっていることを物語っている。しかし彼は、そんなことでは引き下がらない。

「だったらお望み通り、楽しませてやるよ!」

 木の蔓の表面から、今度は銀色の針が飛び出してくる。この針は徐々に太くなり、木の蔓を内側から切り裂いている。

「へへっ……コイツもだいぶ使いこなせるようになってきた。さあ、覚悟しろ!」

 御鷹がそう言い放つと同時に、彼の身を包んでいた蔓は粉砕される。それから彼はメタルミストを剣に変形させ、一気に間合いを詰めた。

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