第18話 「またね」
年が明けた、一月二日。デパートの初売りだしの日であり、メロを元いた場所に帰す日がやってきた。
わたしは耳栓を付け、メロを連れて家を出る。
新たな年を迎えた町は、いつもより閑静で心地良い。そっと胸の中で、良い一年になりますようにと念じる。
デパートまでの道を噛みしめるように、大事に一歩一歩進む。吐く息は、白い。
何かを感じ取ったのか、メロが「きゅう?」と細く鳴いた。「大丈夫」と返す。
この子はこれからどこへ行くのだろう。そもそも野生パンはどこから来たのだろう。
わたしという人間は、これからどこへ行くのだろうか。
今日はくるみは来ていない。メロとのお別れは二人でしたいと、わたしからお願いしたのだ。
デパートに到着してしまった。わたしは決心して、メロを地べたに降ろす。場所は正面玄関前。ここで別れようと、メロと話して決めた。ここでわたしとメロは別れる。別れるけど、また会いに来れる。
「きゅうっ」
メロがふにっとわたしを見上げた。その表情に憂いはない。
だから。
わたしもいっぱいの笑みで、一言だけ告げた。
「またね。メロ」
おしまい
やせいのメロンパン Lost Child 七草かなえ @nanakusakanae
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