第17話 聖夜をキミと

「チキンって手作りローストチキンじゃーん! 美羽ちゃんのお父さんってホントお料理上手なんだね」


 冷蔵庫を開いたくるみが、歓声をあげた。


「へへ。こっちのおむすびは、昨日わたしも手伝ったんだ」

「すごいねえ。具材もいろいろ種類がありそうだし……」

「えーっと。こっちが焼きたらこで、こっちがおかか。作りすぎちゃったかも」

「なら、暴飲暴食するまでだね~」

「イブに暴飲暴食って、なんか面白いかも」


 そんなやり取りをしながら、料理を持ってわたしの部屋へ。広げたクロスの上にお皿を並べていく。テーブルがご馳走でいっぱいになった様を見て、わたしとくるみは揃って感嘆の溜息をついた。


「映えるね~。あ、メロちゃん!」

「きゅっ!」


 いつのまにか部屋の片隅にいたメロが、ふにふにと登場。いつもメロはふにふにしてるな、と感じ入る。安定のふにふに。いつでもどこでもふにふに。


 いつも通りの砂糖っけのある甘い声で、くるみにすり寄る。ふにふにふに。

 くるみが黄緑色の薄皮を撫でると、メロは「きゅううぅ」と気持ちよさそうに鳴いた。


「すごく元気になったね、良かった~」

「きゅう」

「じゃ、早速だけれどパーティーしよっか。せっかくのチキンが冷めちゃうし」


 わたしがそう声をかけ、透明なグラスに母さんの手作りレモネードを注いでいく。メロのぶんも用意しておいた。


「メリークリスマス!」


 かちっとグラスが涼やかな音を立てて触れあう。甘酸っぱいレモネードに口をつける。うん、美味しい。

 続いてつやつやしたソースがかかったローストチキンを、銀のナイフとフォークで恐る恐る切り分ける。お肉がジューシーだ。おむすびはメロに好評で、味なんて関係なく片っ端からかぶりついていた。


「メロ。次はたらこでいいかな?」


 そう言っておむすびをメロの口元に近づけると、ごくんとおむすびを丸呑みされた。


「きゅうう」


 もっとちょうだい、とメロがせがんでくるので、今度はくるみがおかかのおむすびをあげていた。


「良かったねー。食欲も出て」

「うん。本当に良かった」


 言いながら、頭の中で良かったと繰り返す。


 メロを助けられて良かった。

 元気になってくれて良かった。

 クリスマスパーティーができて、楽しめて良かった。


 ――本当に、良かった。



 メロを帰すまで、あと、少し。

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