第14話 穏やかなセカイ

 それからわたしはメロと、公園でいろんなことをして遊んだ。「音」が落ち着いたことが想像以上に嬉しかったのだ。体が羽根がはえたように軽く感じる。


 メロと追いかけっこをした。一緒にいい歳してすべり台やブランコもした。

 中学生になってからお子様向けの遊具で遊ぶと、夜中に大盛りラーメンを食べてるような背徳感がプラスされていい塩梅だ。

 小学校の放課後、大人数で遊具やおもちゃに群がっていたあの頃とは、違う楽しさがあるな。


 人が少なかったから思い切り声も出せたし、メロも具合が良くなっていたのかふにゃふにゃ動き回っていた。


「楽しいね~メロ」

「シーソーで吹っ飛ばしそうになってゴメン。ちょっとメロとわたしじゃ重さに差がありすぎるかな」

「ジャングルジムはちょっと無理かな、スカートだし……すごい! メロてっぺんまで上ってる!」

「だいぶ動いたね、飲み物でも買おうか?」


 わたしたちは、心の底からはしゃぎ回った。イヤホンのお陰でセカイは穏やかそのものだったし、今のわたしとメロは誰がなんと言おうと無敵だった。


 突っ走りすぎて疲れちゃわないようにと、自動販売機で飲み物を買って休憩することにした。休み時間は大事、息抜き大事。


「きゅうううー」

 メロが甘くねだる声を出す。公園の時計は正午近くを示していた。

「お腹空いたの? もうお昼だもんね。自販じゃなくてコンビニ行こうか」

「きゅう」


 公園近くのコンビニに行って、なんとなくパンコーナーだけ避けながら、お昼食べるものやお菓子を物色した。それなりに人はいたけど、イヤホンとメロがいてくれたのもあってさほど気にならなかった。


 大型店舗のようで、お菓子売り場に行けば色とりどりのパッケージが所狭しと並んでいる。チョコクッキー、いちごみるく飴、バナナやミントフレーバーのチョコレート、明太子味のポテトチップス……。

 

 わたしはハーブソースのサラダパスタにホットほうじ茶、お菓子にコンビニスイーツのミルクレープを買う。

 メロにはカツカレーと、うすしお味のポテチ。飲み物はバナナジュースだ。普段コンビニ食はしないから、ちょっと冒険した気分だ。


 イートインコーナーでいつもと違う食事に夢中になっていると、スマートフォンにメッセージが届いた。


「あ、くるみからだ」


 内容はクリスマスのこと。明日学校で詳しいことを話さないかとのことだった。

 わたしからすると、気の置けない友達の誘いを断る理由はない。『OK』とスタンプを返しておく。いずれメロをデパートに返すことも考えなくてはいけないけど。今は楽しいこの時を心配で駄目にするなんて、野暮なことはしたくない。



「メロ、楽しい?」

「きゅっ」

 カツカレーをぺろっと平らげたメロはくるんとスピンして本当に楽しそう。


「これからデパートに戻るまで。うんと楽しもうね、メロ!」

「きゅっ!」


 この日のデートは、大成功だった。

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