十話
「?!」
芽は成長し、葉が芽吹いて枝が伸びる。そして絡み合うように四本の樹になり、水色の花を咲かせた。
「ほぁ、はああ……!」
幼子の背丈程にもなった樹の光で、部屋中が蒼に染まる。咲き誇った水色の花は少しずつ花弁を落とし、樹の周りを舞うように廻った。
「こ、れは……なんですか……!」
煌めく蒼に魅入られそうになりながら、アイリスはなんとか口を動かす。
「少々の魔力を流して、中に入れた姿を浮き上がらせる。なんと言ったか……」
花が全て散ると、舞っていた花弁が溶けるように消えていく。
「夢見映しとか言ってなかったっけ。夢映しだっけ?」
シャオンが言う間に、樹も枝先から解けていく。蒼い光りが完全に消えると、夢見映しは元の水色の姿で、ヘイルの掌に収まっていた。
「夢見映し……どういう仕組みなんですか?」
「見たものの姿を中に閉じ込めるんだ」
感嘆のため息を吐きながら聞くアイリスの膝上に、ヘイルは夢見映しを置く。
「中のものが見えるか? ……持って良いぞ」
言われ、恐る恐る水色の箱を手に取る。顔を近付けて細かい模様の奥を覗くと、親指ほどの大きさの何かが蒼く煌めいていた。
「これ……さっきの……?」
アイリスは小さく呟く。絡み合う四本の樹と周りを廻る花弁が、水色の空間に浮かぶように閉じ込められていた。
「情報量が多いから作るの面倒なんだよね。見る分には良いけど」
「そうなんですか?」
「そのものまんまを
そう言ってシャオンは肩を竦める。
「なるほど……単純化するのも大変なんですか?」
顔を上げたアイリスの言葉に、シャオンは目を瞬いた。
「たんじゅんか?」
「この樹だったら枝振りはそのままに、木肌を滑らかにしてしまうとか。葉脈もとても綺麗に出てましたけど、その情報を削ってしまうとか…………」
どんどん目を大きくしていくシャオンに、アイリスの声は小さくなる。
「いえ、あの、その精密さがあるからこそあの素晴らしさが再現出来てるんですよね。変な事言って……」
「その手があったか」
シャオンが呆けたように言って、ヘイルを見る。
「そおぉだよ加工すれば良いんだ! 仕事が楽になる!」
「面白い考えだな」
顎に手を当て、ヘイルは口の端を上げた。
「色々応用が利きそうだ」
「???」
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