28品目 ビーフシチュー
「じゃあ、ボーが村まで案内するから俺はここでお役御免だな。暫くシンは竜人の村に居るんだろ?」
「そうだな。何か進展があったら竜人の村まで連絡しに来てくれよ。あ‥‥‥後、無人島に居るヨルさんにお握りを渡すの頼んでも良いか?」
「ヨルさん?」と、頭上に?を浮かべているユウジに黒蛇のヨルさんの事を説明してあげた。
「あの大蛇かよ‥‥‥シンの知り合いは魔物が多すぎないか?まあ、渡しておくよ」
そう言ってユウジは空を駆けるように飛び立っていった。
ボーさんの案内によりスムーズに村に着くことが出来た俺達は、竜人達に俺の説明をすると言われ、村の集会場に案内されて待たされる事1時間。
ボーさんがようやく迎えに来てくれた。
「村の者達には、創造神様の存在を伏せて説明しましたので、どうぞお好きなように村でお過ごし下さい」
「どんな説明をしたか気になる所ですけど、怖いから聞かないでおきますよ。そういえば、集会所とかは村の竜人達が建てたんですか?」
「建物を建てるのが得意な者が居ましてね。その者に村の建物を建ててもらったのです。シン様の食堂も建てさせましょうか?」
ボーさんのお言葉に甘えて食堂を建ててもらうことにした。
紹介された竜人はジョーという名前の青年で、俺を見つめる瞳はキラッキラッに輝いていた。
本当にボーさんはどんな説明をしたんだよ‥‥‥怖くて聞けないわ。
ジョーの熱い視線を気にしない様にしながら、俺はせっかくだし古民家を建ててもらう事にする。
見本さえあればジョーは作れるという事だったので、古民家の外観や内観の写真を魔石で調達してジョーに渡した。
古民家がどのような工法で作られてるかは知らないので、外観が古民家風だったらそれで良いよ、と言うと「シン様が住まう建物ですので、全力で作らせて頂きます」と、ジョーは張り切って外に飛び出して行った。
その姿を見て一層不安が増した俺に、ボーさんが村の調理場を案内してくれる。
「え?これが調理場なの?」
柱が4本立っていて、上には簡易的な屋根があるのみ。
何時の時代の調理場だよ!と、ツッコミたくなる様な石で積み上げられた竈。
「我等は魔物の肉を焼いて食べるだけですので、これで事足りるのです。シン様には申し訳ないのですが、食堂が出来上がるまではここで料理をしていただければと思います」
「これって、改造しても良いんだよね?」
「お好きなようにしてもらって結構です」との事だったので、まずは調理場を改造する事にする。
リーシアと一緒に調理場を改造し始めてから数時間。やっと、調理場と言える様な見た目になってきた。
「今日はこの位にして、飯でも作るか?」
「そうね。もう夕方だから作ってしまいましょうか。竜人達が魔物を大量に狩って来てくれたし」
調理場の横には竜人達が狩って来た魔物の山。
俺の為なのかは分からないけど、皆が気合を入れて狩りをしてきてくれたようだ。
俺達では食いきれない事もあって、竜人達にお願いして干し肉などに加工してもらったが、それでもまだまだ魔物はたくさんある。
「今日食べる分だけを残して、後はマジックポーチに入れておいてくれるか?それにしても多いな‥‥‥せっかくだから、竜人達の分も作ってしまうか」
そういうわけで、今日の夕飯は竜人が狩って来た魔物【バシリスク】を使って『ビーフシチュー』にしようと思う。
じゃがいも、にんじん、マッシュルームを食べやすい大きさに切っておいて、小麦粉を野菜になじませておく。
フライパンに油を中火で熱して、牛肉を入れてときどき返しながら全体にこんがりと焼き色がつくまで焼く。
別の鍋で赤ワイン、トマト、コンソメ、砂糖、ウスターソースを入れて中火にかけながら、木べらでゆっくりと混ぜ、煮立ったらそのまま1分ほど煮つめて、焼いた肉と野菜と水を入れる。
後は、灰汁を取りながらコトコト煮込むこと30分。
美味しいビーフシチューの完成だッ!!
今まで焼いただけの肉しか食べて来なかった竜人達は、ビーフシチューの匂いに釣られ、続々と調理場に集まってきていた。
「大量に作ったから竜人の皆もたくさん食べてくれ」
初めて食べる未知の料理を、恐る恐る食べていく竜人達であったが、あまりに美味しかったのか、大量に作ったビーフシチューをおかわりしていた。
「見ろよリーシア。あの竜人達の幸せそうな顔。この瞬間を見る為だけに料理人になったと言ってもいいからな」
「‥‥‥」
「食事に夢中になってないで、俺の話を聞けよ。はぁ‥‥‥俺も腹が減ったし食うか」
ん〜!肉がほろっほろだ。バシリスクの肉がこんなにやわらかいとは思っていなかったわ。ビーフシチューのソースの味も野菜や肉にしっかりと染み込んでいて美味い。
ノワル達にも大満足だったようで、今は調理場の横でグータラ寝転がってるわ。
竜人達からも感謝され良い気分になっていた俺だったが、次の日からも調理場の横に大量の魔物が置かれる事になり、古民家レストランが建つまで竜人の村の調理担当になってしまうのであった。
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