最終章 夢の古民家レストラン

26品目 豚バラキャベツの味噌鍋

 パック達と別れてから2日後、迷宮都市に戻って来た俺達の姿を見て、少しざわついたものの、無事に?迷宮都市の中に入る事が出来た。


 冒険者ギルドの職員から、従魔証を発行してもらったので、宿でも取ろうかとリーシアと話していた時の事だ。


「よお。シンの事だから、迷宮都市に来てると思ったから寄ったけど、やっぱり居たな」


 声がした方を向くとユウジが立っていた。


「おお!久しぶりだな!」


「久ぶりって‥‥‥まだ1か月かそこらしか経ってねぇぞ?」


「そうだっけ?この世界に来てから、濃い日常を送ってるからそう思うのかもな」


「確かに俺も来た時はそうだったな‥‥‥って、こんな話をする為にシンを探してたんじゃなかったわ」


「俺を探してた?」


「ああ。無人島が見つかったぞ」


「えッ!?」


 突然のユウジの言葉に、デカいを声を上げてしまう。ギルドに居る人達も、何事だ?と視線を向けて来るので、場所を変えて話をする事にした。


 以前、迷宮都市に来た時に泊まった宿の部屋が空いていたので、宿の部屋で集まって話をした。


「そういえばララノアさんは?」


「無人島に残って、魔術の解析をしてもらってる最中だ。だが、解析には結構な時間がかかりそうなんだ」


「やっと見つけたんだな。やっぱり、結構離れた場所に無人島はあったんだろ?」


「いや、この大陸のすぐ近くにあったんだ。まさか島ごと魔術で隠してるとは思わなかったぜ。ララが潮の流れがおかしな場所を偶々、上空から見つけてな‥‥‥誰が何の為にそんな事をしたのかは分からないがな」


 まさかユウジもこの大陸の近くに、無人島があるとは思わなかったからスルーしていたそうだ。


「そうか。わざわざ教えてくれてありがとうな。それで、もうユウジは無人島に戻るのか?」


「せっかく会えたのに、シンの料理を食べないで帰るはずないだろう?」


 以前に俺の親子丼を食べてから、日本食が恋しくなったようで、味噌を使った料理にしてくれと言われた。


 味噌を使った料理で一番最初に思い浮かぶのが、サバの味噌煮なんだけど、今は魚を持ってないという事だったから、味噌鍋にすることにした。




 キャベツはザク切りに、にらは4〜5cm長さに、にんにくは薄切りにしておく。


 鍋に水、味噌、白すりごま、唐辛子を合わせ、もやし→キャベツ→豚バラの順に広げて乗せ、にんにく・輪切り唐辛子を散らして、蓋をして強火にかける。


 沸騰したら中火にし、全体に火が通るまでコトコト3分ほど煮ていこう。


 最後に、にらを乗せてサッと煮たら『豚バラキャベツの味噌鍋』完成ッ!


「うひょーッ!!味噌の良い香りがたまんねぇ!もう食べていいよなッ!?」


「熱いからゆっくり食べろよ?」


「俺の母親みたいな事いうなよ!しかし、懐かしい‥‥‥一人狭いアパートで、良く味噌鍋にして食べてたのを思い出すわ。豚バラの旨みが味噌とマッチしてて最高の一品だな」


「美味しいッ!!この中にご飯を入れても美味しそうじゃない?」


「それだッ!!シン、白飯をくれ!!」


 ここぞとばかりに注文をしてくるユウジの姿をみて、苦笑いしながらも俺は米を炊いていく。



「そういえばさ、俺のスキルについて判明した事があるんだよ」


「魔石のヤツか?」


「あー‥‥‥それとは別なんだけど、料理のスキルなんだ。俺が作った料理を食べると、身体能力が上昇しちまうみたいでさ。人が多い街にレストランを開業しちゃうと、俺の料理を食べた人がどんどん強くなっていってしまうんだよ」


「なんだそのスキル‥‥‥だからノワルに叩かれてもシンは平気なのか。別にレストランを開業しても良いんじゃねぇか?」


「けどさ、俺のスキルがバレたら貴族に絡まれそうで嫌じゃんか」


「一応、ノワルをテイムしてるのはシンだろ?そんな怪物に手を出す馬鹿が居るとは思えないけどな。だったら貴族の手が届かなくて、面白い場所にでも連れてってやろうか?」


「面白い、場所‥‥‥?」


 話を聞いてみると、この大陸には『亜人』が住む集落が森の中にあるという。獣人や竜人。他にも様々な種族が森の中に村を作り生活しているらしい。


 一応エルフも亜人ではあるのだけど、人間が住む町にもチラホラと姿を見かける事はある。だが、言われてみればその他の亜人の姿は見た事がない。


「別に人間との仲が悪いから森で暮らしてるってわけじゃねぇぞ?簡単に言えば、刺激がある場所に居ないと気が済まないんだよ。シンもせっかくこっちの世界に来たんだ。いろんな場所に足を運んでみたらどうだ?」


「それもそうだな。じゃあ、亜人の集落まで案内をしてもらっていいか?」



 ユウジの言う通り、せっかくこの世界に来たんだ。レストランを開業するのを急ぐ必要はない。いろんな場所に旅をして、自分がビビッと来るような場所で開業した方がいいもんな。






















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