25品目 カレーライス
ドラゴンの赤ちゃんを連れてきてから1週間。トロン村の村長に事情を説明して、暫く村の近くに厄介になる事にする。ドラゴンの赤ちゃんの名前は【エリオ】。緑色の体表だからこの名前にした。
エリオが大きくなるまでは、この村でのんびりしながら過ごそうかと思ってたんだが、何故こうなった…?
「リーシアッ!!米を炊いといてッ!!」
『チャーハン10人前ちょーだいッ!』
「はい。パックちゃん。重たいけど、持てる?」
『よっゆー!!』
あんな小さな体で軽々と、ヒョイと大皿に乗った10人前のチャーハンを持ち上げる光景も、ここ最近の日常になってきた。
「パックちゃんは相変わらず凄いわよね…何処からあんな力が出るのかしら?」
「それな。というか、日に日に妖精の数が増えてないか…?」
「あはは…シンが妖精達を連れてきても良いって、言ったからじゃない?」
「いや、連れてくるって言っても限度があるだろッ!?何人居るんだよ‥‥‥」
何故こんな状況になっているのかと言うと、村長に事情を話した夜に俺達の元にやってきた、パックの何気ない一言に軽々しく答えた俺のせいだった。
「まあ、賑やかで楽しいから良いんじゃない?妖精達がこんなに居る光景なんて、中々見れる事なんかないわよ?」
「俺はある意味、貴重な体験をしてるって事か?まあ、料理を作るのは好きだし、何より美味しそうに食べてくれてるみたいだから、気分は良いんだけどな」
遠くの草原ではゴマがエリオに、狩りの仕方を教えている。
正直、種族が違うから大丈夫か?と最初は思ってたけど、ゴマとエリオは毎日狩りをして遊んでる。流石ドラゴンと言うべきか、この1週間ですくすくと成長して、今では少しの間だが飛べるようになっていた。
「ねぇ…エリオの身体の色がどんどん黒くなってきてない?」
「気付いちゃった?俺の料理のせいだよな?」
「そうでしょうね。シンの料理を食べに来ている妖精達も、最近身体の調子が良いとか言ってたわよ?」
「暫くここに居ようかと思ってたけど、やめた方がいいかな…?このままだと、俺の料理を食べ続けた妖精が、規格外の存在になる気がするんだが…」
俺の料理によってドーピングされた、妖精達を想像したら怖くなるな…
「よし。今日にでも一旦、迷宮都市に戻るか。エリオがデカくなりすぎてからだと、街にも入れないしな」
「…なんだか、自分に言い聞かせてるように聞こえるのだけど」
リーシアの的確な言葉を聞こえない振りで躱し、妖精達には今日で旅立つ事を伝える。
『やだやだやだやだッ!!もっと美味しいの食べたいッ!!』
「こうなっちゃうわよね…パックちゃん。最後にシンがとっておきの料理を作ってくれるから、それで暫く我慢出来る?」
『とっておきッ!?食べたい!それ作ってくれたら我慢するッ!!』
「じゃあ、シン頼むわね」と、話が進められてしまったわけなんだけど、とっておきか…パック達が普段は食べれない料理…
「パック達は米料理が好きみたいだからな。となると…カレーだな」
久しぶりに魔石から食材を調達するな…流石にスパイスからカレーを作った事はないから、カレーのルーでお手軽クッキングにする。
今日は地龍の肉を使おうと思う。ドラゴンは肉の種類で言うと、牛肉に近い感じだから、ビーフカレーに近い感じになると思う。
フライパンにバターを溶かし、おろしニンニクを入れて香りが出たら玉ねぎを炒める。
この時は焦がさないように、キャラメル色になるまで炒めてよう。
次は鍋にサラダ油を熱し、ドラゴンの肉を炒め塩コショウをする。にんじんも入れ、玉ねぎも入れて炒めていく。
水を入れていったん煮立たせ、アクをとったらローリエの葉を入れ、さらに30分煮込む。
後は火を止めてルーを溶かし、弱火でコトコトと暫く煮れば『カレーライス』の完成ッ!!
『わあッ!!美味しそう!食べても良い?』
「熱いからゆっくり食べるんだぞ?」
『あふっ…美味しいッ!!なんか、ぴりっとしてるのがあるけど、それがまた食欲をそそるね!』
「美味しいだろ?じゃあ俺も…うんまッ!!ドラゴンの肉からにじみ出た旨味や、スパイスの香りや辛味とあわせて、程よい塩気、甘味、酸味が交差して最高だ…何処か懐かしい感じがする味なのも良いな」
今回はパックが居るから甘口にしたけど、実は俺は辛口派なのだ。辛くなきゃカレーじゃないッ!!とか、いうわけじゃないけど、もう少し辛い方が好きだな。
あんなに作ったカレーも、妖精達はノワル達と競うように全て平らげてしまった。
俺のカレーに満足したパック達とお別れをした俺達は、迷宮都市にエリオの従魔証を発行してもらいに向かう。
また、門の前でエリオを見て大騒ぎになるんだろうな…そんな事を考え、門番に申し訳ない気持ちになった。
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