第7話 出会い-1
「超高度演算装置って、人工知能ってこと?」
電気をつけて、床の上に胡坐をかきながら、シトロンと名乗る謎の機械に問いかける。
「人工知能と言えば人工知能ですし、違うといえば違います」
玉虫色の答えに困惑する。こいつは、結局なんなんだろう。
「えっと、具体的には? 複雑な計算ができるとか?」
そもそもこれだけ高度なコミュニケーションができる時点で、ただの人工知能ではないことは明白だった。
「ふふふ、計算能力なんて機械の標準装備ですよ。いわば赤子のおしゃぶり、老人の杖といったところです」
「そうなんだ……」微妙にわかり辛い例えに本当に頭が良いのか疑いたくなったが、ぐっと堪えた。「なら、どこが普通の人工知能と違うんだ?」
「なにを隠そうわたくしは、世界初の超絶美少女エーアイなのです!」
「……いや、美少女もなにも顔がないじゃん」
こればっかりは指摘せずにはいられなかった。
「おやおやぁ? もしやアドミニスターはご存じないのですか?」
「なにを?」
小馬鹿にしたような言い方で微妙にイラっと来る。
「美少女の定義です」
「知らないけど」
「ではでは、お教えしましょう! 美少女とは、ずばり心と体の合計点なのです!」
「……はぁ?」
なにを言っているんだろう。流星の頭はそんな気持ちでいっぱいだった。
「例えば、顔が百点で心が零点の人がいたとしましょう。果たしてこの人は美少女と呼べるのでしょうか?」
「いや、それは単なる悪女だな」
可愛いだけで性格最悪なんて、どう考えても周囲に混沌を招くタイプだ。
「では、顔が七十点で心が三十点は?」
「それは……不良?」
ヤンキー座りでコンビニの前にたむろする女が想像できた。
「ではでは、顔が七十点で心が七十点の場合は?」
「それはいい子だな。いい子っていうか、可愛い子」
なぜか風香の顔が脳裏をよぎる。気恥ずかしさから、かぶりを振って頭の中から掻き消した。
「ではではでは、顔が百点で心が百点の場合は?」
「まごうことなき美少女だな」
力強く答えるものの、残念ながらどんな人物か想像できない。
「でしょう! そうでしょう! 先ほど申し上げた通り、美少女とは、心と体の合計点が高い人を指すのです。わたくしは、心に二百点ステ振りした比類なき美少女ということですね」
「……ん? んんー?」
顔が百点で心が零点は悪女。
顔が七十点で心が三十点は不良。
顔と心が七十点はいい子。
両方百点なら美少女。
確かに合計点が高くなると美少女に近づくのはわかる。ただシトロンの場合、体が零点で心が二百点。それって、ようはつまり、
「心だけで二百点って、それ合計点じゃなくないか?」
流星の素朴な疑問を「その話は終わりましたよ、アドミニスター」、と彼女はあっさり切り捨てた。
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