第3話
そうこうするうちに、夏も終わりに近づき、髪をスッキリ後ろでまとめた受付のお姉さん、水嶋さんに、
「みなさんで食べて下さい」
と、彼にリクエストされた差し入れの、551のアイスキャンデーを渡して、サマソニの話をしていたところ、白のダボッとしたTシャツに、ベージュの大きめのズボンを履いた、フワフワの短い髪をした私より小柄で若い女性が整骨院に迷い込んできた。
彼女は整骨院にやってきた理由を誰にも言いたくないらしく、
「ねえ、何でそうなったのか言いたくないならいいけど」
と受付で、彼に言われていたのを見てしまった。
腰を痛めた彼女は、私と違って、彼に言われた通り、毎日、通院しており、傍目にも分かるほど、どんどん元気になっていった。
受付で、
「明日も来いだって」
次の予約を取りながら、笑顔を顔面に貼り付けた水嶋さんに、嬉しそうにそう言って、診察カードを返されていた。
私は後ろに並んでいたので、彼女の顔は見えなかったけど、彼女はのろけるような、甘ったるい声をしていた。
いつもは気さくに患者さん達と接している水嶋さんの、仮面のような笑顔が怖かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます