第3話

 そうこうするうちに、夏も終わりに近づき、髪をスッキリ後ろでまとめた受付のお姉さん、水嶋さんに、

「みなさんで食べて下さい」

 と、彼にリクエストされた差し入れの、551のアイスキャンデーを渡して、サマソニの話をしていたところ、白のダボッとしたTシャツに、ベージュの大きめのズボンを履いた、フワフワの短い髪をした私より小柄で若い女性が整骨院に迷い込んできた。

 彼女は整骨院にやってきた理由を誰にも言いたくないらしく、

「ねえ、何でそうなったのか言いたくないならいいけど」

 と受付で、彼に言われていたのを見てしまった。

 腰を痛めた彼女は、私と違って、彼に言われた通り、毎日、通院しており、傍目にも分かるほど、どんどん元気になっていった。

 受付で、

「明日も来いだって」

 次の予約を取りながら、笑顔を顔面に貼り付けた水嶋さんに、嬉しそうにそう言って、診察カードを返されていた。

 私は後ろに並んでいたので、彼女の顔は見えなかったけど、彼女はのろけるような、甘ったるい声をしていた。

 いつもは気さくに患者さん達と接している水嶋さんの、仮面のような笑顔が怖かった。


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