第2話

 商店街のアーケードを歩いていても汗ばむお盆前のある日、整骨院に行くと、彼の姿がなかった。

「稲村です。今日は、蒔田先生の代わりに、僕が担当させて貰いますんで」

 そう言って担当してくれたのは、私が最初に来院した時に、整骨院にいた彼と同じくらいの年齢で、背は少し高いくらいの、茶髪の先生だった。

 青い整体師の制服を着て、カルテを持って笑う稲村先生について行きながら、私は、

 ――何で、いないんだよ。

 自分で、「今日来い」と言っておきながら、お盆休みかよ……。

 って思って、ムッとしていた。

 そうなのだ。

 私が勝手に浮かれているだけで、向こうは仕事なのだ。

 そう思っても何か寂しくて、施術台の上でボーッとしていると、稲村先生がしつこく私の左小指をいらっていた。

 痛くはなかったし、熱心に治療してくれているのは分かったけど、私は何か嫌だった。

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