第17話

 「ひぐ…静留さまぁ…!」

「竜斗様…」

「怖いよぅ…!」

「マオ様…ルカ様…ひぐッ、」

「うるせーな…早くコイツら売り飛ばせねーのかよ」

苛々した様子で闇オークションの関係者が言う。

「お前は待つ事が出来ないのか?其れに、今回は良質なモノばかりだ。ボスがヒーローにバレないようにするのに必死なんだぞ」

「チッ」

familiarの隊員の内、何人かは闇オークションに商品として出品される事になった。

「……皆、大丈夫。絶対」

お下げ髪の隊員が、他の隊員達を落ち着かせるように言った。

「ハッ、どうせ助けなんか来ねーよ」

「…お前ら。愈々始まるぞ」

闇オークションが、始まる―――


 『お越しの皆様!本日はとても良いモノばかりです!是非、ご購入下さい!!』

カーンッ、と開始の音が鳴る。

「100万!」

「200万!」

『次々と値札が上がります!…おや!89番の方、1京…?!誰か、他にいらっしゃいませんか!!』

誰も値札を上げない。

纏めて1京ならばともかく、1人1京は高額過ぎるのだ。

『89番の方に出品されました!名前を教えて下さい!』

すぅ、と89番が口を開く。

「道永静留だ」

ニヤリと、弧を描いた。


 「静留様!」

「良かった、私達助かるのね…!」

恐怖では無い、安堵の涙を流す隊員達。

「…は?」

「いやいや、まさか、有り得ない…」

必死に何かを否定する関係者達。

「道永静留は…ヒーローに捕まったんじゃ……?!」

「悪いが捕まってない」

静留は隊員達のもとに飛んだ。

ふわり、とステージに立つ。

「静留様!!僕、僕、」

「まだ泣かないでくれ。今から逃げるぞ」

「え?」

静留が何かを投げる。

刹那、桃色の気体が会場内に充満する。

「粉状に潰して散らしやすいようにした睡眠薬だ」

睡眠薬入りのボールを次々に投げる静留。

とても楽しそうだった。

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