第15話

講堂はざわついていた。

何故かって?

多くの子供達がヴィランによって誘拐され、他の子供を誘拐する仕事をさせられていたからだ。

「ストックホルム症候群なんだろ?」

「怖いね…」

違う、と静留は言いたかった。

だが、今此処でそんな事を言えば捕まる。

最悪の場合、竜斗やfamiliarの隊員達に更なる危害が加えられるかも知れない。

「…やっぱり、ヴィランは根絶やしにしなきゃ…!」

隣に居た玲香が呟く。

『君達、静粛に』

最高責任者である学院長が声を発すると、一気に静まり返った。

『…この中にヴィランが居る』

ザワリ。

困惑、動揺が広まる。

『其処で、被害者に来て貰った』

「……?!」

来なさい、と言われ出てきたのは――

「……は?」

今川瑞樹だった。

「え、交換留学生?」

「被害者だったの…?」

『…話しなさい』

(瑞樹、何で…)

『僕は、一ヶ月程誘拐されていました』

『ヒーローに保護される迄、とても怖かったです』

顔を暗くする瑞樹。

『ですが、ヒーローによって救い出されました』

パァッ、と瑞樹の顔が明るくなる。

『其のヒーローは誰ですか?』

学院長の問いに瑞樹は答えようとする。

其の時、静留は気付いた。

(――瑞樹、嘘を吐いている?)

静留達が瑞樹を保護したのは約一年前。

辻褄が合わないのだ。

『道永静留、十六夜竜斗の御二人です』

「は?静留が?」

これには学院長も驚いたようで、

『な、何故あの二人なのです?』

『僕を絶望から救い出し、居場所を与えたのは誰でもない、静留さん、竜斗さんです』

『僕にとってのヒーローは、Dioなんです!!』

だから、と瑞樹は続ける。

『今度は僕が恩返しですよ』

刹那、講堂は暗闇に包まれた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る