第10話

「ロイさん!勉強教えて下さい…!」

「んー?どれかな〜?」

ちびっ子隊員に勉強を教えてくれと頼まれたロイ。

非番でやる事が無く、暇を持て余していたので丁度良いと教える事にした。

「此処の掛け算が分からなくて…」

「其処はねぇ…9の段を使うと良いよ」

「…解けた!」

「ならこの調子で解いて行こうか」

「はい!」

ちびっ子隊員が頑張る姿を眺めていると、不意にfamiliarに来る前の事を思い出した。

殴られ、蹴られ、ご飯は抜かれ、冷たいシャワーしか浴びれず、毎日心は絶望に沈んでいった。

静留達が来なければ、ロイは命を落としていた。

「…」

だが、ロイにも愛情を注がれた時期はあった。

父親からは無かったが、愛人であった母親からは沢山愛を貰った。

……其れからはもう、注がれなくなったが。

ロイは心の中で自嘲した。

だからこそ、居場所をくれた静留、竜斗には感謝し切れないのだ。

「出来ました!」

「凄いじゃん!御褒美に飴あげるね」

「わぁ、ありがとうございます!」

飴を受け取るとちびっ子隊員は部屋を出ていった。

ロイは、窓の外を眺めた。

一羽の鳥が羽ばたいた。

窓に映るロイは、あの頃とは違い輝いていた。

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