第3話
「ちょっと、静留!講義遅れるわよ!」
「煩いなぁ…二度寝の何が悪いんだよ…」
「ほら!早く歩く!!」
静留を叱っているのは、幼馴染の馬氷玲香。
英雄科二年A組25番である。
「早くヴィランを完全排除する方法を学ばなきゃ!」
(…俺がヴィランになって敵対したら、どうなるんだろうな、こいつ)
はぁ、と静留は小さく溜息を吐いた。
静留は少し…否、かなり玲香が苦手だ。
玲香は正義感が強く、悪はどんな理由であろうと排除するべきと考えている。
其の為、静留は幼馴染であるがあまり関わりたく無いのだ。
「お早う、道永くん、玲香ちゃん」
二人に挨拶したのは玲香のルームメイト、清利里佳。おっとりとしており、成績は優秀。だが、運動は苦手な賢哲学院高等部二年A組。
「おはよう、里佳!」
「おはよ」
「今日は外部から講師の方が来られるよね」
「そうなのよ!本当に楽しみ!やはりヒーローこそが正義なのよ!!」
「…」
今日の講義には外部から講師を招き特別講義が行われる。
参加は自由な為、 静留は不参加…にしたかったが勝手に玲香が申し込んだ為強制参加だ。
「おっはよ〜!何の話ししてるの〜?」
「竜斗」
「特別講義が楽しみって話よ」
「へぇ、確かヒーローだったよね?」
竜斗は何とか朧気な知識を思い出す。
これでも、情報科では成績一位なのだ。
「そうよ!はぁ、まさか生のヒーローにお会い出来るなんて…!」
うっとりとする玲香を余所に静留と竜斗はそそくさ歩いていった。
唯一、里佳だけ困惑しながら玲香を待っていた。
『やぁ、君達!私はしがないヒーローだ』
ヒーローが言うと、ワッと歓声があがる。
ヒーローはマイク越しに話している。だが、声量にマイクが負け、耳障りな音が鳴る。
『ふむふむ…君達は貴重なヒーローの卵だ!学ぶ事は何事に置いても大切だ、貪欲に学びなさい』
静留、竜斗以外の全生徒が返事をする。
煩い、と静留は耳を塞いだ。
『では本題に入ろう』
『先ず、ヒーローとは一般人を悪の手・ヴィランから守る素晴らしい役割だ』
(なら何で俺はヒーローに見捨てられたんだよ)
心の中で、静留は悪態をついた。
其処から静留は余り覚えていない。
どうやら、眠っていたようだ。
気が付けば大講堂は静留、竜斗、里佳、玲香以外居なかった。
「静留!何で寝たの?!」
「落ち着いて、玲香ちゃん…」
有り得ない、と言いながら怒る玲香を里佳は宥めていた。
静留は素知らぬ顔で竜斗と逃げ出し、感想を話していた。
「竜斗はどう思った?」
「んー、胡散臭かった。」
「だよな」
何故二時間も大ッ嫌いなヒーローについてヒーローから話を聞かなければならないのだ。
静留は少し疲れていた。
「今日は本当に最悪だ…」
ポツリと静留は呟いた。
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