第51話 政府警察グループの心理状態

 政府警察グループは、大統領にテロリスト認定されてしまったため、功を焦っていた。


 もしブラックドラゴンを召喚できなかったら、日常に戻るための退路がない。


 逆に考えれば、いくらテロリスト認定されても、ブラックドラゴンを使って敵陣営を滅ぼせれば、民衆はこちらの味方をするはずだ。


 となれば、なにがなんでも傭兵グループから暗黒の契約書を奪い返さないといけないため、攻撃衝動のブレーキが壊れかけていた。


 政府警察グループに所属する二十代の兵士が、造幣局の裏口を守っていた。


 彼は戦争で大切な兄弟たちを失っていた。その復讐のために、ブラックドラゴンを利用しようとしていた。


 肉親の復讐は正しい道だと考えているからこそ、大統領にテロリスト認定されたことは心外であった。


 やはりあの情けない男では、戦時指導など無理だったのだ。ブラックドラゴンのような力強い存在に頼んだほうが、何百倍も頼りがいがある。兄弟の復讐が完了した暁には、大統領も焼いてもらえばいい。


 なんてことを考えていた彼は、造幣局をぐるりと囲んだ茂みの合間に、傭兵グループの兵士を発見した。


 発砲許可は出ていなかった。もし政府警察グループと傭兵グループが交戦すると、暗殺部隊が漁夫の利を得ることになるからだ。


 だがしかし、彼の判断能力は揺さぶられてしまった。


 傭兵グループの抱えた荷物に、本らしきモノを発見したからだ。


「もしや、あれが暗黒の契約書か!?」


 目の前の餌に釣られる形で、無許可のまま発砲してしまった。


 それが合図になって、政府警察グループと、傭兵グループは、激しい銃撃戦を開始した。


 ちなみに傭兵グループが抱えていた本は、暗黒の契約書ではなく、臨時造幣局の屋内図が付録された書籍だった。

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