第3話 リハビリ

 ムルティスのリハビリが始まった。


 精神的に辛くて苦しいリハビリだった。


 ムルティスの狙撃が、ユグドラシルの木を折るきっかけになったことは、病院のスタッフも知っていた。


 普通に接してくれるスタッフもいたが、嫌悪感丸出しのスタッフのほうが多数派だった。


 リハビリ中に、体がうまく動かなくて、その場にころんっと倒れても、誰も助けてくれない。


 なんて薄情なやつらだ、と怒りも沸いたが、それ以上に肩身が狭かった。


 早くこの病院を退院したいと思った。


 だが軍の病院ですらこの状況なら、街中ではもっとひどい扱いを受けることが想像できた。


 リハビリが順調でも、ずっと気が重かった。


 戦争の最前線でどれだけ恐ろしい体験をしても、こういうタイプのプレッシャーと遭遇することはない。


 これだけ精神的に疲弊してくると、ガナーハ軍曹に励ましてほしかった。


 だが彼は最近就職したらしく、その職場は病院から遠すぎるため、次に会う機会があるとすれば、リハビリが完了したあとになりそうだった。


 いろいろタイミングが悪いなぁと思うものの、とにかくリハビリを終わらせないと体が不自由なままだ。


 ムルティスは、あらゆる雑念を捨てて、リハビリを完了させることにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る