第10話 家族
「…い……おい。」
聞き慣れた声が聞こえる。
目をこすりながら開くとそこには死んだ大樹の担当医がいた。
彼はこちらを心配そうな目で見ている。
俺は
「悪い。迷惑をかけたな。」
と言い部屋から出ようとすると彼は俺に一言。
「頑張れよ。」
と声を掛けてきた。
何に対する頑張れかは分からなかったが善意は受け取っておこう。
「ありがとう。」
その一言だけ残しその部屋を去るのだった。
部屋を去り病院内をうろちょろしているときだった。
電話が掛かってきた。
相手は疾風だった。
電話に出ると俺が何かを言う間もなく
「会社に来い。」
そう言い電話を切るのだった。
いつもの手続きをしてあいつのいる部屋に向かう。
寝起きにされる急な予定ほど腹が立つものはないからな。
ドアを蹴飛ばし部屋に入るとそこにはカスがいた。
目が合うと同時に二人は俺に対して罵声を浴びせてきた。
聞くと耳が腐りそうなカスみたいな単語を並べている。
カスとカスはお似合いということだろう。
10分程経っただろうか。
眼の前の二人はゼーゼーと息を吐きながらこっちを見てる。
それをスルーして疾風に対して
「疾風。帰っていいか?」
と聞くと疾風は
「今からが本題だから帰らないでくれるか?」
と言ってきた。
そもそもこれに拒否権などないのだろう。
無言で疾風の横に座る。
5分ほどの休憩を取ってから話し合いが始まった。
眼の前の二人は口を開けば恩知らずや金食い虫などの暴言を吐いてた。
しかし、一向に俺の親権を手放さそうとしない。
恐らく保険金目当てだろう。
そして2時間ぐらいたっただろうか。
なんやかんやあったらしい。
正直退屈すぎて仮眠を取ってた。
そして起こされたときには話し合いは終わっていた。
眼の前の二人はなにかに怯えたような表情をしている。
おそらくその原因は隣の疾風だろう。
悪い笑みをしている。
疾風は2人に2つの選択肢を出した。
「2人の前には2つの選択肢を出します。
条件を飲み今すぐ帰る。
もしくは、ね?」
2人は前者を選びそそくさと帰っていった。
そして俺は梅雨前の5月に縁を切ることができた。
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