第5話 出会い

なかなか返事が来ないので仕事の手を止めて翔を見に行く。

すると彼は寝てしまっていた。

「はぁ。全く。」

と呟きながら出会ったときのことを思い出す。



7年ほど前だろうか。

まだ俺が社長になる前の話となる。

とある会社で働いていたところ同僚に嵌められ会社を自主退職させられ少し病んでたときだ。

その時の俺はどうにでもなれのような感じで貯金を使い旅行をしていたときだった。

最初は主要都市等を巡っていたが自然もいいな。

と考えなれない場所で迷子になってしまった。

とりあえず開けた場所を探し歩いてたときに見つけた大樹。

そこにいたのが翔だった。

彼は何かを見つめていた。

それに対して俺は恐怖を覚えた。

見た感じ7歳ほどの小ささに対して目が虚ろになっており少し表しにくいが自殺してもおかしくない雰囲気があった。

声をかけると少年は

「何?」

とこっちを見てきた。

どうでも良くなっていた俺は翔の横に座りな

「何かあったのか?お兄さんが話を聞いてやろう。」

と言うと翔は

「別にいいけど……」

そして翔の口から語られた話はとても重かった。

二十歳まで生きることは不可能である。

10代で死ぬであろうこと。

家族は俺に対して興味を持ってないこと。

病院生活であるということ。

自殺を望んでいること。

などの話を聞かせてもらった。

気付いたときには翔は涙を流していた。

俺は横でタバコを吸いながら一つ質問をする。

「結局お前は何がしたいの?」

と聞いたら翔は

「わからない。やりたいことがあるわけでもないし何かもう辛い。強いてゆうなら幸せになりたい。」

と言った。

俺はふと立ち上がり

「なぁ、俺と友達にならないか。」

と一言。

急にそんなことを話した俺は何言ってるのかわかんなかったし翔も意味が分からなかっただろう。

自分にもよくわからないが謎の自信があった。

何に対しての自信か聞かれたらわからない。

そんな俺の発言に対して翔は

「それで幸せになれるの?」

と聞いてきた。

それに対して俺は

「それはわからん。でも退屈はさせない。」

と答え手を差し出した。

そんな発言に対して翔はふっと笑い

「じゃあお兄さんに賭けてみるよ。僕の人生を。」

と言い俺の手を握ってくれた。

そこからは退屈しない日々だった。

勢いで企業した。

4割ほどは賭けだったが残りは謎の自信だった。

そして何をするかは二人で話し合い成功するビジョンが見えないような案に手を出したり信頼できるものを集め1つの組織を作ったりして今では上場して安定した会社経営をしている。

翔は気が向いたら俺の会社に来てどうでもいい話を駄弁ったりしてる。



あの日の出会いがなかったら俺らの未来はどうなっていたんだろうな。

「なぁ、今のお前に夢はないのか。やりたいことはないのか。今のお前はとても退屈そうだよ。俺はお前のお陰で希望を持てた。俺はお前のサポーターだ。なぁ、またお前の笑顔を見てみたいよ。」

誰もそれに答えることなく書類の作業音だけが再びなるのであった。

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