ステップ1 難しすぎる乙女心

私は麦野メグ。ごくごく一般的な、1人の男のことが大好きな女子高生。

その男とは・・・・・・今朝振った私の元彼秋津ナギくんである。


私だってわかってるつもりだ。たった今朝振った男が好きなんて馬鹿げた話だと思う。それには理由がいろいろあるんだけれども・・・・・・


「私が悪いんだよなあ」


「そんなことないですよ」


そう声が聞こえて驚き上を見ると、目の前にはこの授業の担当をしてる美術教師レーナ先生がいた。

芸術の街パリから来たという先生は透き通った青い目にサラッサラの金髪、女子の私でも見惚れるスタイルの3つをあわせ持つ校内人気ナンバーワン教員だ。


「とってもいい絵ですよメグさん そんなこと言わないで! 」


「違うんです・・・・・・作品ではなくて・・・・」


そこまで言いかけると先生は何か納得したような表情をし、その後ちょっと意地悪な笑みを浮かべながら


「てことは・・・・恋愛? 」


「えっ・・・・」


「当たりですか? 」


レーナ先生は生徒のことをよく見てる。それは知っていたけどまさかここまで見抜かれるなんて思わなかった。某高校生探偵さんでも無理なんじゃないかな視覚だけでここまでわかるのなんて。


そんな風に思いながら戸惑ってる私を見ながらレーナ先生は


「青春ですねぇ 相談ならいつでも乗ってあげるから、今はその素晴らしい絵に命を吹き込んであげてくださいな」


わかりましたと言う前にレーナ先生は教卓に戻ってしまっていた。というか「青春だねえ」なんていうけど先生まだ23でしょ! 先生とは言いながらもまだ学生特有の若々しさを垣間見せる年。そんなところも人気の理由なのかなと思い絵の制作に戻った。


授業終了の鐘の音。レーナ先生の号令を皮切りにみんなは休憩時間に入る。この時をずっと待っていた私はすぐに森村君を探す。幸い彼はすぐに見つかった。


「森村君! 」


「わっ!  ・・・・って麦野さんか。あれだろ? ナギと話してたことだよね? 」


私は待ってました! と言わんばかりに首をこくこくと動かす。みんな戻ってしまった美術工作室なら他の人に聞かれる心配はないだろう。私がまだかまだかとせかすと森村君は一呼吸おいて話はじめた。


「俺も色々ナギの奴と話したけど、あいつ『これだけは言わないで! 』とか『2人だけの内緒ね! 』とかばっか言うからほぼ言えることはないんだ。麦野さんもこの内緒の密会の事ナギに言われたら嫌だろ? 」


私は正直落ち込んだがすぐに「そりゃそうだ」と納得した。この内緒のやりとりがナギくんバレたら流石に恥ずかしすぎる。本当に森村君は本当に筋が通ってて信頼できる人だと改めて感じた。


「ただこれだけは言ってもいいかな。ナギは君のこと嫌いになんかなってないぞ。」


時刻は丁度2時。それはそろそろ傾いてきた太陽の光とともに照らされる、希望にあふれた返答だった。


「本当?! 」


「ああ本当だ。しかも・・・・ってヤバい! 次体育だ! 」


止めようとしたが森村君が授業に遅刻するのは困る。気を付けてとだけ言い残し私も教室を出ようとすると一人の影が後ろから出てきた。

誰かと思い困惑したがその影は優しくつぶやく。


「秋津君とのこと、応援してますよ♪ 」


その影はレーナ先生だった。そういえばここ生徒は誰もいないとはいえ教室だ。担当教員はいるに決まってるじゃないかと今更気が付き顔が真っ赤になる。


「れ、レーナ先生このことはどうか・・・・」

「顔真っ赤ですね 青春青春です♪ もちろんこのことは 2人だけのヒ・ミ・ツ♪ ですよね 先生は生徒との約束守る人ですよ」


バレたのがレーナ先生で本当に良かった。そう安堵しながら私も教室を去ろうとする。

すると去り際にレーナ先生が一言


「メグさん あたってくだけろ! ですよ! 」


と、応援の言葉を送ってくれた。私はお礼を言い次の授業のため美術室を出た。レーナ先生にバレたとき先生から顔が真っ赤になったといわれたがなおってるかな、なんて心配をしながら足早に教室に向けて走っていた。


______________________________________


流石にヤバい!

音楽担当の飯島が7分も授業延長するせいで着替える時間がなさすぎる!


普段の体育担当の下田先生なら笑って許してくれるが先生は今日出張でいない。

ということは風紀委員会担当の堅物、佐ケ野先生が担当に入るはずだ。185cmを超える巨体から放たれる目力はどんな不良をも黙らせる。あの人が特に注意の対象として厳しく見てるのは遅刻だ。流石に間に合わなければ学校生活が死ぬ!


そんな風に思い急いで音楽の教科書を教室にしまい運動着を持って更衣室まで駆け抜ける。ほとんどの生徒は教室にいるか運動場に行ってしまったらしく人はほとんどいない。これなら全力で走っても迷惑かからないと思い気合のダッシュ。

そんな僕が周りなど見えてるはずもなく、目の前に人影が見えたときにはもう、ぶつかっていた。


とっさにぶつかった人の頭の下に持っていたジャージ袋を置いたので大事には至らなかった。僕もぶつかってしまったお相手もケガはなさそうだ。


その時僕はぶつかった相手の顔を初めてまともに見た。その同時くらいに相手がこちらに話しかける・・・・・・

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