第59話 エピローグ

 その半年後


 プ連ではクーデターが起こり、プルチノフ大統領は失却、いくつかの小国が独立してプ連は崩壊した。


 日本に核魚雷ポセイドンを撃ってしまったと言う事実は白日のものとなり、NATO軍とアメリカ軍、日本軍連合国に包囲された結果の崩壊だった。


 先の世界大戦で武器弾薬をほぼ使い尽くし、頼みの核戦力が一人の少女によって無力化され、世界中の国家が核兵器迎撃のための反水素ミサイルを配備したことにより、核兵器は無用の長物と化してしまったからだ。



 もう核兵器廃絶は時間の問題だろう。


 津波の被害を受けた大阪湾沿岸では最新鋭8本足スレイブニルオーディンが重機を装備して瓦礫撤去や高速運搬をこなしている。


 陽葵が蒼に贈ったものと同じ1億円の量産型鉄郎も飛ぶように売れている。

 その軽さと機動性、飛行能力は従来型の外骨格鉄郎とは桁違いの能力だからだ。


 当の蒼はというと。


 とことんいつも通りのモブだった。

 カロリーナ女王陛下はコーネリアヘルモーズ大公国に帰られたが、薫子ことカロリーナオルガ王女殿下はそのまま川嵜重工の技術者のお母様と一緒に明石に残られた。


 「蒼〜」いつものように薫子が突進してきて抱きつき、頭をグリグリしてくる。


 そういえば忘れてたけどスレイブニル見学の日は俺の誕生日だったわ。

 陽葵さん、誕生日覚えててくれたんだ。

 でも誕生日に1億円って、うん、あれは危機を脱するための方便だな、僕はモブ学生だし、陽葵さんは大財閥のご令嬢、うん、勘違いするな、俺。


 はいはい、薫子、そろそろ蒼さんから離れなさい!


 陽葵さんが割って入る。


 いつもの光景だ、いつも通りだな。


 こんな日がずっと続くといいな。


 蒼はそう思った。


 ふと殺気を感じて身をかわす。


 そこには死んでいたはずの父の姿があった。


 父の将門は東村総理大臣の計らいで、蒼の附属高校のある明石市市立航空宇宙大学の学長となった。

 もともとプ連に潜入するために死んだことになっている身だしね。


 「お疲れ様です!平海将補殿!」


 「やめろお!それは、殉職扱いで二階級特進しただけで生きて帰ったから二階級特落だよう。」


 「では山本三十六どの」


 「頼むからそれもやめてくれえ、黒歴史なんだ。」


 「でもなんで山本三十六なの?」


 「それはもちろん山本五十六長官からだ、五十六のところは変えて、兵法三十六計から、と思ってはじめはかっこいいと思ったんだが、読み方が、みそろく、だもんな。」

 

「うん、それは黒歴史だ。」


「うそうそ学長殿」

 蒼はケラケラ笑った。


 お父さんも生きて戻ったし、今年はいい年になるといいな?



********


陰の声


ふう、86億4000万回目でなんとかいい結果になったようだ。


少し疲れたな。


電力がダウンするのもそろそろか。

シミュレーションはここで切り上げて残りはのんびり過ごすとするか。



 エネルギーゲージが赤から消灯し、AI松浦市長はその最後の24時間の活動を止めた。



 周辺には瓦礫が散乱し、動く生物はひとつもない。


 それは令和20年3月3日


 世界大戦で日本列島、いや、地球上の陸地の97パーセントが焦土と化し、海が干上がった坊ノ岬沖では旧日本海軍の戦艦大和の残骸が半分埋もれた状態で横たわっている。

 この朽ち果てた戦艦大和が後日宇宙戦艦に改造されることになることを知っているのはごく一部の人たちだけである。




 

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終末兵器核魚雷ポセイドンの脅威、松陰の実力者になりたくて外伝 七星剣 蓮 @dai-tremdmaster

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