第56話 反水素
「あるわ!反水素。」
薫子があっけらかんと答えた。
一同が改めてすごい勢いで振り返る。
「明石市立航空宇宙大学の私の研究室に。」
「おいちょっと待て!反水素?あれは経済産業省の許可と総理大臣のサインがなければ保有できないはずだぞ!」
将門が叫ぶ。
「あら、許可はもらったわよ、陽葵に頼んで川嵜重工の実験施設スプリング∞で生成してもらったもの。」
陽葵はお約束どおり後ろを向いて口笛を吹く。
薫子の母親も斜め上を見上げて目が泳いでる。
「そんな危険物実験室に置くんじゃねえ!扱い誤ったら明石市が丸ごと吹っ飛ぶか消滅するぞ!」
「あたし天才だから間違わないよ。」
薫子が悪びれることなく答える。
蒼一人が名前通り青くなっていた。
おれ、そんな危ないところに通ってたのか。
「お前らー!」
将門は怒りかけたがいまは一刻を争う緊急事態、諜報員らしく切り替えてきた。
「それで反水素をどのように使うのですか?カロリーナオルガ王女殿下。?」
「どうもしないわよ、大容量の容器は完成させてる、エナジーフィラー一つか二つ接続しておけば安全に持ち運びもできるわ、この潜水艦の魚雷にでもくくりつけてポセイドンにぶつけるの。」
「ちょっと時間ちょうだい。」
一言言うと、薫子はスマートペンを取り出してAI薫子3人を展開する、この合議で最適解を導き出すのだ。
「私も手伝います、最適な起爆時間とエネルギー量を出せばいいのですね。」
もう一人の天才、東村外務大臣が同じくスマートペンで自身のAI東村亜希子3人を展開する。
およそ3分、6人の合議により一番核魚雷ポセイドンの威力を削ぐための最適解が弾き出される。
「これが作戦立案書です、お父様、いえ、東村総理大臣と防衛大臣とシェアします。」
東村亜希子外務大臣は手際良く緊急対策本部の東村総理大臣と外務大臣と情報を共有する。
「すぐに実行したまえ、可能性のあることは全てやってくれて構わん、私が責任を取る」
東村総理大臣は即断する。
「じゃあ、私、研究室に反水素ボックス取りに行くわ、誰か送ってくださる?」
後藤艦長が下士官に移動手段を確保させる。
数分ののち下士官が報告する。
「艦長、ダメです、地上は放置された車で通過できません、全てのスカイアークは避難民を運ぶために出払い戻ってきません、スレイブニルなら可能かもしれませんが、あの大きさでは逃げ遅れた人を避けることもできません。」
「なん、だと、他に方法はないのか!」
下士官は静かに首を横に振った。
ポセイドンが爆発するまであと70分しかない。このままでははくげいが退避することも出来なくなる。
「八方塞がりだ!」
艦長が頭を抱える。
「ワシが6本足スレイブニルで。」
芳裕が言うが、
「ダメなんです、それでは振動が大きすぎますしもう時間がありません。」
万事休すか。
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