第53話 核魚雷ポセイドン発射さる、そして破滅へ

 その時、市ヶ谷の自衛軍統合司令部から急報が入る。


 「なんだって!!核魚雷ポセイドンが発射された、だと。!」


 山本三十六がもたらした情報を元に横須賀から出航した全長263メートルのスクリューを使わない総排水量9000トンの巨大な最新鋭やまと型潜水艦隊3隻は(6つの超電導コイル(超電導磁石)を束ねた電磁推進装置を6基搭載しており、それぞれの超電導コイルの内部には樹脂管が通されていて、その内面に取り付けられた電極により超電導コイルから磁界を発生させ、電極から電流を流すことで特殊樹脂管内部の海水に力が作用して海水はウォータージェット式に船尾から噴射されて推進力に変える。[実在])太平洋で音もなく密かに原潜ベルゴロドに接近してスーパーキャビテーション技術を利用した音速魚雷の波状攻撃を行いベルゴロドの撃沈に成功したもののすでに魚雷が発射された後だったのだ。


 最新鋭やまと型潜水艦はその能力を最大限発揮して、発射されたとみられるポセイドンを全力で追尾していたが、深度が深く潜られてロストしてしまった。


 これで平芳裕、将門親子の20年は無駄になってしまったことになる。


 作戦計画より早く発射した理由は定かではないが、プ連軍の綱紀が緩み、適当にぶっ放して逃げることにしたのかもしれない。


 プ連軍の内部事情を知る山本三十六は直感的にそう思った。


 事態は深刻だ。


 魚雷には原子力推進と深海の海図を元にした航路を割り出して目的地に進むAIが搭載されている。

 山本三十六が提供した海図をそのまま使っているはずなのである程度の予測はつくとはいえ、発射されてしまった核魚雷を爆発させずに沈めることなど神業に等しい。

 沖合とはいえ万一核爆発を誘発してしまったら東海から四国沿岸までを高さ300メートルの津波が襲う、結果は同じ破滅なのだ。


 核魚雷ポセイドンの速度は時速にして約80キロ、大阪湾到着まで2時間ほどしかない。


 かなり絶望的な状況だ。


 市ヶ谷では東村総理を議長とする緊急対策会議が開かれてはいるが、これと言った妙案もなく時間だけがすぎていく。


 こうなっては国民に隠すこともできない。


 東村総理大臣は事実通り公表し、緊急大津波警報を出すことに決めた。


 大阪湾近辺はパニック状態になる。

あと2時間以内に標高500メートル以上に移動しなくてはならない。

ただ、被害シュミレーションの結果、六甲山裏側の神戸市北区や三田市、西宮市北部、宝塚市北部、生駒山東部には被害がないことがわかったのでそちらを目指す。

全ての電車やバス、民間の送迎バスまで動員、飛べるだけ全てのスカイアーク、連節スカイアークや輸送ヘリコプターをピストンしてできる限り高台を目指す。

 昔と違い、空路が使えることでパニックも緩和される。



 南海トラフ大津波のための避難訓練も多少役に立っただろうか。


 次回、大混乱。

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