第50話 別れ
2隻のU2540は川嵜重工の水中港に寄港する。
浮上するとそこはもう川嵜重工工廠の内部だ。
山本三十六は5年ぶりに日本の土を踏んだ。
続いて主に白人の女性たちが下艦してくる。
その数100名、全員が女性だ。
その全員が訓練を積んだ軍人ばかりである。
全員が女性なので山本三十六はコードネームを「シャドウガーデン」にしたかったようだが、統合司令本部からあっさり却下されてしまった。
仕方ないので「S機関」で落ち着いた。
ちなみにこの女性たちは厳密には山本三十六の部下ではなく、コーネリアヘルモーズ大公国女王陛下直属の親衛隊候補生たちだ。
勝手にシャドウガーデンなどと呼ぶなど確かに恐れ多い。
この任務が終わった暁には全員正式に親衛隊隊員となるのだろう。
「よしアルファ!最後の命令だ、現在カロリーナ女王陛下一行がプ連に雇われた傭兵マグネルに襲撃されていると聞いた、直ちに急行して女王陛下一行をお守りしろ!それがお前たちの本来の任務だからな!いけ!」
「YES!シャドウ様。」
シャドウガーデンの女性たち100名は自分のなすべきことのために走った。
「さて」
山本三十六自身もなすべきことをなさなくてはならない。
川嵜重工工廠の若い事務員とともに事務室に赴き、暗号作成に取り掛かる。
些細を市ヶ谷の自衛軍統合司令本部に伝えるためだ。
「こちらです。」
若い事務員に案内された事務所に入って驚いた、あるはずのものが何もない。
マグカップの置かれた机と昔の電話ボックスのようなものしかないのだ。
騙された!
咄嗟に山本三十六は拳銃を抜き、事務員に向ける。
「ヒィ!」
若い事務員が引き攣った顔で両手を上げる。
「これはどういうことだ!俺が統合司令本部に連絡することはわかっているよな!何もない部屋に案内したということはお前はプ連のスパイか!」
「ち、違います、そのボックスが通信設備なんです。」
「ふざけるな!ここはいつから昭和になったんだ?電話ボックスから電話しろと言うのか!」
若い事務員はすっかり青ざめてアワアワしている。
コンコン、
そこに薄いブルーのスーツに国会議員バッジをつけた女性が入室してきた。
山本三十六は反射的に銃を向けるがその女性は落ち着いていた。
「こちらでしたか、シャドウ様ことS機関の山本三十六2等海佐殿、私は東村外務大臣随行の政務官、仲谷公恵です。」
山本三十六は銃をしまった。
「では仲谷政務官、急ぎなんだ、通信室に案内してくれないか。」
「そちらが通信設備ですわ。2等海佐」
公恵が電話ボックス?を指差す。」
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