第49話 U2540撃沈
時はスレイブニルオーディン見学会の日に戻る。
潜水艦はくげいの中は緊迫していた。
「魚雷管注水音!」
翔子が叫ぶ。
これは緊急事態だ。
「第一種戦闘配備!これは訓練ではない!繰り返す!これは訓練ではない。」
カン、カン、カン、カン、警報音とともに赤い警告ランプが激しく点滅する。
「魚雷管1番、4番開け!」
その時翔子は不思議なことに音楽?を耳にした。
「艦長!待ってください!」
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一方、U2540の山本三十六はS機関主席のコードネーム「アルファ」と呼ばれる女性士官に奇妙な指示を出す。
「やっぱ、陰に隠れて活動する我々には、これだよな、この曲艦内に流してくれ、大音量でな。」
それは20年前にアニメ放送されていた「陰の実力者になりたくてオープニングテーマ、OxTが歌う、HIGHEST」だ。
山本三十六はこの曲が大好きで、自宅でも何度も何度も大音量で聞きながら一緒に歌い、妻からひんしゅくを買っていた。
幼い息子は喜んで一緒に歌ってくれてたようだが。
「艦長!正気ですか?戦闘の真っ最中ですよ!」
アルファが怪訝そうに尋ねる。
普段なら笑って指示に従うが、いまはS機関全員の命と大阪湾近郊の1000万人の命がかかっている。
「私は正気だよ、やってくれたまえ。」
「それと音通魚雷セット。」
アルファは魚雷担当のガンマに準備させる、同時にベータに指示して音楽をかけさせる。
館内にHIGHESTが響き渡る。
山本三十六が鼻歌混じりに一緒に歌い始める。
アルファは山本三十六がこういう人物であることはよく理解している。
********
はくげい艦内に戻す。
「艦長、待ってください。」
ソナー員の翔子は耳をすます。
魚雷発射管注水音は1つのみ。
それと、
嫌と言うほど聞かされたあの音楽が聞こえてくる。
海中ではある程度の近距離なら潜水艦内部から漏れる音を聞くことができるのだ。
そしてU2540から発射された一発の魚雷、音通魚雷と言われ、あらかじめセットされた音を再生しながら相手の潜水艦に情報を伝えることができる。
もちろん距離が離れたプ連潜水艦には聞こえない。
電波も使わないので傍受される心配もない。
翔子は叫ぶ!
「この曲は!、私の夫です!U2540には私の夫が乗ってます。」
「シャドウか!」
艦長クラスはプ連に潜入している風機関、S機関の存在を知らされている。
音通魚雷が近づくと同じHIGHESTの曲と共にはっきりとした暗号符号音波が届く。
復号するとメッセージが現れる。
[ わたしはシャドウ、プ連KGBに潜入していたS機関である。
プ連書記長は核魚雷ポセイドンの作戦計画指示書にサインした。
その作戦計画指示書を届ける。
S機関100名の収容を請う。
その後、当海域にて魚雷と爆雷を爆発させ、Uボート2隻撃沈とアナウンスされたし。]
一旦欺瞞工作かとも疑ったが、プ連工作員が日本のアニメ主題歌を大音量で流すなどありえないことから信用に足るという結論に達した。
「こちらも音通魚雷セット準備、川嵜重工水中港につけるようメッセージを送れ。」
「1番魚雷発射管注水、てー!」
********
アルファから報告が上がってくる。
シャドウ様!はくげいから返信の音通魚雷来ます。
[些細了解した、二隻とも川嵜重工水中港に寄港されたし、貴艦離脱後速やかに魚雷攻撃と爆雷攻撃を行い二隻撃沈と報告する。]
「よし!川嵜重工に向かうぞ。」
********
Uボートは離脱したな。
はくげいとたいげいからもぬけのカラの海域に魚雷と爆雷攻撃を仕掛ける。
「不明潜水艦2隻撃沈!」
無線にて司令部に報告される。
そして山本三十六は5年ぶりに日本の土を踏んだ。
次回、別れ。
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