第48話 山本三十六の選択

 数日の航海ののち山本三十六の乗る欺瞞潜水艦U2540、二隻は紀伊水道沖に到着した。


 さて、なんとかして日本国自衛軍にこの核魚雷ポセイドン作戦計画書を届けなければならない。

 しかも日本国とは一切の通信はできない、どこで傍受されているかわからないからだ。


 KGB本部とプ連日本大使館には欺瞞潜水艦Uボートを展開することは伝えてある。

 川嵜重工襲撃の側面支援とプ連原潜の案内誘導という名目だ。


 ここからは慎重に事を行わなくてはならない。

 山本三十六の10年間、特に後半5年間は殉職者扱いになっての活動は隠密行動であり、自衛軍の中でも将官クラスしかその存在を知らない。


 さて、どうやって俺の存在を自衛軍に知らせるかだな。

 

 KGBからの情報だとたいげい型潜水艦2隻とイージス護衛艦まで展開しているという。

 一つ間違えば有無を言わさず撃沈され、山本三十六は死に、ポセイドンを止めることもできなくなる。


 二重スパイに墓標はないとは言っても大阪ベイエリア全体を墓標にするのでは流石にデカすぎるだろう。


 山本三十六はアホなことを考えていた。


 プ連の計画書では大阪湾の海底地形を完全に把握している山本三十六達のUボートからの誘導を受け原潜ベルゴロドが接近、紀伊半島の外側からポセイドンを発射し、淡路島東岸30キロ地点でポセイドンを爆発させ高さ500メートルの津波を起こし、関西と四国東部を壊滅させる、うまくいけば南海トラフ地震を誘発させることもできるだろう。


 旧ナチスドイツのU2540潜水艦(Uボート)の残骸を残す事で欺瞞工作を行い、プ連の攻撃ではない、ネオナチの仕業だとアナウンスする腹だ。


 地上ではすでにナチスの制服を着せた雇われ戦闘員を派手に戦わせて衆目を集めている。

 カロリーナ女王とその王女、スレイブニルの技術者、川嵜重工そのものも消し去ることができる。


 流石にポセイドンの被害が大きすぎるためまさかカロリーナ女王とスレイブニルを狙ったものだとは思われないだろう。


 あとは女王のいなくなったコーネリアヘルモーズ大公国に送り込んである反政府勢力を王に据えて傀儡政権を立ててプルチノフ連邦国に組み入れるわけだ。

 

 ここが正念場だ。


 KGBに悟られずに原潜ベルゴロドの位置を知らせなければならない。

 

 もともとU25402隻は日本に撃沈させ、残骸を残す計画なので放棄しても構わない。

 ただ、イワノフはすでに殺害してしまったため、山本三十六とイワノフはU2540と一緒に沈んだと思わせなければならない。


 複雑で困難なオペレーション計画を頭をフル回転させて組み上げる。



 そして一つの答えを導き出した。


 次回、撃沈。

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