第47話 大脱出

 山本三十六は焦っていた。

 

 ポセイドンが発射されるまであまり時間がない。


 ただ、理論上は地球上どこでもプ連本国から発射して攻撃できるのだが、深海の海図となるとまだまだ不正確だ。


 となるとある程度まで日本近海に原潜ベルゴロドで近づいてからの発射というのが現実的だろう。

 トマホークと違いGPSの信号は当てにできないからだ。


 ということで巨大原子力潜水艦ベルゴロドが出航するまではまだ間に合う、ポセイドンごと撃沈すればいいのだから。


 山本三十六はなんとしてもイワノフの死亡を隠し通し、プ連原潜出航より早く日本にポセイドン運用指示計画を伝えなければならない。


 KGBから10年にわたる信頼を得ている山本三十六(ディーツイットフレスト)はかなり自由に動くことができ、ある程度の権限も持たされている。


 ただ、バディのイワノフを殺害してしまったのでもう長居はできない。

 スラム街でイワノフに顔や背格好の似たホームレスを探して床屋に連れて行き身代わりをさせる、ウラジオストクにつくまでのカモフラージュなのでついたら金と酒でも与えて放逐すれば良い。


 ウラジオストクにはプ連の欺瞞潜水艦がある。

 100年前に鹵獲したナチスドイツのUボートを動態保存させておき、敵のソナーを欺くのだ。


 急いでS機関のメンバーに連絡を取る。

 ウラジオストクのUボートを確保するためだ。

 

 適当な理由をつけて2隻のUボートを平穏に奪取し、それで日本に帰国するのだ。

 もちろんクレムリンに知られてはならない。

 計画の変更などされてはこの20年が全くの無駄になるからだ。


 

 その頃ペトロパブロフスクで出航を待つ全長181メートルの巨大原潜ベルゴロドに核魚雷ポセイドンへの積み込み作業が行われていた。


 山本三十六はいつもイワノフと一緒にウオッカを飲んだくれていた酒場の裏通りに入る。

 以前からこのような事態に備えて人脈は作ってある。

 その計画通り男にカネを渡してウラジオストクまでのバディに仕立て上げる。


 二人のKGB身分証を示してゼルタイオッツ(日本のスカイアークのようなもの)をチャーターする。

 過去に何度も使っているので担当者も疑わない。


 「これでおさらばだ、Проща́й! 」




 数時間の飛行ののちウラジオストクのUボートに乗り込む。

 すでに乗組員は全てS機関のエージェントに置き換わっている。


 プ連国内からは全ての通信手段が盗聴されているので一切連絡は不可能、KGBに怪しまれない方法で統合司令部にこのポセイドン運用計画者をなんとしても届けなからばならぬ。


次回、山本三十六撃沈?

 

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