第49 話推しと指切りの約束

会社での仕事を終わらせて、自宅マンションに疲れて帰った佐藤。  

やっと、未来たんから癒しを受けられる。そう安堵して自宅の扉を開ける。  

  

 すると、トトトと廊下を未来たんが小走りで笑顔で出迎えてくれる。  

  

「佐藤さん、おかえりなさい。お腹空いたでしょう?ごはんできていますよ。  

ごはんにしますか?お風呂にしますか?それとも、わ・た・し?」  

と未来たんは顔を朱色に染めて恥ずかしがりながら言う。  

  

男なら一度は、妄想するであろう、定番の新妻シチュエーションのやりとりに男心をくすぐられてしまう。  

  

「このシチュエーション、好きな男の人に前からやってみたかったんですよ。男の人ってこういうの好きなんですよね?」  

  

  

「大好き!控え目に言って最高。このセリフを女の子から言われるのが夢だったんだ」と内心、暴れまわる、動悸を静めて言う。  

  

  

「控え目でですか!?でも、喜んでくれて良かったです」とご満悦の様子。  

  

推しから新妻シチュをやって貰えるなんて、俺は、明日死ぬかもしれない......  

  

「じゃあ、ごはんで」  

未来たんは食後のテデザートにしようかな。なんてキモいことを考えてしまった。  

  

「今日は、チキン南蛮ですよ、たんと召し上がれ!」  

  

「わー、肉ー!美味しそうーいただきます!」とダイニングテーブルに付き、箸を持ち、まずは  

味噌汁から手を付ける。ナスと長ネギの味噌汁で、長ネギの歯触りが良く、がアクセントになって美味しい。  

ほっこりとする。  

  

夕食を食べながら、未来たんは、「ところで、部長さんには退職の件を伝えられましたか?」  

と質問する。  

  

 佐藤は、箸を置き、今日会社で部長と交わした、事のてん末を語る。  

  

 「という事でダメだったな......」  

  

「そうでしたか、それにしても、部長さん酷過ぎませんか!佐藤さんにそんな酷い扱いをするなんて」と未来たんには珍しく、語気を強めて言ってくる。彼女なりにこの話を聞いて憤りを感じたのだろう。  

  

未来たんが、俺の代わりに怒ってくれて、胸がスッとした。  

  

「それにしても、どうするかなー。このままじゃ、辞めたくても辞められないぞ」  

  

「それなら、わたしに考えがありますよ」  

  

なにやら未来たんには考えがあるようだ。佐藤には考えが及ばないが、それに賭けてみよう  

  

「ここは、わたしが人肌脱ぐ必要があるようですね。任せておいてください!」  

と自信満々に豪語する。  

  

ヤダ、頼もしい!と未来たんの男前な発言に胸キュンする佐藤。  

  

 「そうだ、無事に会社を辞められたら、わたしのお願いを聞いてくれますか?」  

  

「ああ、いいぞ。そうなったら未来たんには返しきれない恩ができるしな」  

  

「やったぁ!」と未来たんは子供の様に喜ぶ。その姿が可愛く、微笑ましくなってしまう。  

  

「ところで、どんなお願いをするんだ?」  

未来たんが叶えたい願いならなんだって叶えてあげたい。  

  

「わたしのお願いは、佐藤さんとデートをすることです!」  

  

「それなら、お安い御用だ。どうせなら、一緒に夏祭りに行かないか?」  

未来たんと一緒に行く夏祭り。さぞ楽しいことだろう。  

  

「夏祭りですかー、いいですね。花火も見られますか?」  

  

「ああもちろん、花火つきだぞ」  

(夜空に大輪の花火が咲き誇り、花火が上る夜空の元で未来たんといい雰囲気になり、そして... ) 

  と妄想してしまうのは男の性だろう。

「いいですね!約束ですよ」と未来たんはふふっと嬉しそうに微笑む。  

  

本当に楽しそうだ。仕事を辞められなくたって叶えてあげたいと思った。  

  

「ああ、必ず。指切りだ」と小指を未来たんに差し出す。  

  

「指切りげんまん、噓ついたら全指切ってそのままのーます。指切った!」  

  

「怖いな!」と佐藤は想像してしまい、思わずゾッとする。  

  

未来たんと会社を辞めたら、一緒にしたいことを約束するのだった。  

  

               ***  

夕食を食べ終わり、リビングでくつろいでいると、未来たんから声が掛かる。  

  

「佐藤さん、お風呂がもうすぐ沸くので先に、お風呂を頂いてください」  

  

「いいのか?俺が先に入っても?」と佐藤は聞き返す。  

  

 女性が、先に入った方がいい気がするがいいものなのだろうか?  

  

「なにを言っているのですか、一日懸命に働いてきた人が先に入るべきですよ」  

  

「そうか、それならお言葉に甘えて先に頂くとするよ」  

佐藤は、自室からパンツとシャツを持ってきて、風呂へと向かう。  

  

浴室に入り、今日も一日疲れたな。と頭を洗いながら、一日の疲れを洗い流す。  

  

風呂は心の洗濯と言うがその通りだと思った。温かいシャワーを頭から浴びていると  

嫌なことを洗い流しているようだ。髪を洗っていると後ろで浴室の戸が開いた。  

  

何事かと思えば、バスタオルを体に巻いた未来たんが入ってくる。  

  

 「な、なにしに入ってきたんだ!?ちょっと待った、タオル!」と佐藤は急いで前を隠す。  

  

「なにしにってお背中を流しに来たんですよ」と未来たんはさも当たり前のことのように応える。  

  

未来たんはバスタオル一枚しか隔てていないタオルから溢れんばかりの彼女の豊満な双丘を前に目のやり場に困る。  未来たんの体はタオル一枚だけで隔てるものは他になく彼女のスタイルの良さが際立つ。

  

 視線を下げれば、バスタオルの裾からほどよく肉づいた太ももが覗き、目のやり場を無くしてしまう。  

  

 未来たんは、「佐藤さんお背中を流しますね」とネットを泡立てて、佐藤の背中を「うんしょ、うんしょ」と柔らかい泡を伸ばし洗っていく。それが、泡の感触と未来たんのモチモチの掌の感触が合わさりなんとも背徳感でいけないことをさせているかのような気持ちになる。  

  

佐藤は、必死でビッグウェポンになりそうな陰部をタオルで隠す。  

  

未来たんは佐藤の背中を洗いながら「佐藤さんのスゴク大きいのですね。やっぱり男の子ですね」と後ろから耳元で囁く。  

  

「へー、どこがだろ?」恐る恐る訊いてみる。  

  

未来たんの角度からは見えないはず。まさかな......

  

「いや、大きい背中だと思いまして」  と関心したように言う。


「ああ、背中かー」  


そうですよ、佐藤さんの大きな背中は、立派に働いてきた大人の背中です」


「そうかな」

  「今まで、よく頑張りましたね、えらいです。あとは、わたしに任せておいてください」


「未来たん......ありがとう」


  「どういたしまして」

  「どうして、ここまで良くしてくれるんだ?」

未来たんからは貰ってばかりで返しきれない。そこで退職の手伝いまでさせたら返し切れない。


「わたしはただ、疲れている佐藤さんを癒したいだけですから」  

  

「そうなんだ、俺の為に無理して体を張ってくれたんだな。ありがとう」  

それなのに俺は、なんてことを想像してしまったのだと自分の想像を恥じたかった。  

  

「お背中を洗ったあとは前ですかね?」と未来たんの滑らかな手が前方へと伸びてくる。  

  

「駄目駄目駄目駄目ー!」と佐藤は某スタンド攻撃をするかのように連呼して腕でガードする。  

  

「いい、前は自分で洗うから!」  

だって、流石に、前はいけないのだ。未来たんの柔らかい手で触られたら絶対に反応してしまう。  

「俺、もう、浴槽に入るから!」と浴槽へと避難する。  

  

「あ、わたしも一緒に入ります」と未来たんも付いてきて、アレがああなってこうなってこうなった。  


「佐藤さんと一緒のお風呂ー♪」と未来たんは鼻唄交じりにお湯に浸かる未来たん。  

  

緊張する佐藤。  

  

現在、佐藤が胡坐をかいた股の間に未来たんが収まっている形だ。これには、未来たんの体を見ると悪いからこの体勢を取ったがこれはこれで危ういと今更ながら気が付いた。  

  

 未来たんの柔らかな体がバスタオル越しに佐藤に密着して、ドキドキして心臓に悪い。

  

「いい湯ですね、佐藤さん」未来たんは佐藤の焦りなど知る由もなくお気楽にお風呂を楽しんでいる。  

  

未来たんの首元に顔を埋めて腕を彼女の腕を包み込む。もう少し下にずらせば、柔らかな感触を堪能できるのだろうけど、未来たんに嫌われたくわないからそれはしない。  

  

 なんとかして理性を保っている状態だった。が、それも限界にきていた。  

  

「佐藤さん、今後あなたが疲れて帰って来たときは、わたしが全力で癒しますからね」  

  

「未来たん......なんて、嬉しい言葉だろう。こんなに嬉しいことはない!」  

  

 「そんな大袈裟ですよ、わたしは佐藤さんにいつも元気でいて欲しいだけです」 

「あなたの癒しになりますし、佐藤さんを苦しめるあんな会社を辞めて貰って、わたし達のプロデューサーになって貰うのですからね」

未来たんと密着したこのシチュエーションでこの言葉はヤバイ!心の芯まで未来たんの虜になってしまいそうだ。というか、もうなっている。 

未来たんとお風呂で甘々なムードになっていた。 

「佐藤さん、そっちを振り向いてもいいですか?」 


「え?!ちょっと待った!見えるぞ」 

 

今、未来たんに振り向かれたら、彼女の双丘が見えてしまう。 

「いいですよ、佐藤さんになら......」 

 「いいのかよ、変なことするかもしれないぞ」

好きな女の子とお風呂でこんなに密着したら、触ってみたいという欲求が無いわけでではない。

でも、ここは『今はその時じゃない』と必死に堪えて理性を保つ。


未来は振り向くとタオルがお湯で体に張り付き、体のラインがくっきりと表れていた。 

胸の起伏が協調され豆だって浮彫りになり丸わかりだ。目のやり場に困る。 

 

「キ、キスしたくなったので、いいですか?」 

 

この状態で!?お風呂に入りながらほぼ裸でキスを求められるって、なんのエロゲ? 

 

それでも、未来は佐藤を求めてきて佐藤も、それを拒むことなどできずに、食後のデザートで甘い果実を味わうのだった。 


               ***

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