第45話 推しと交際公表会見

未来たんと恋人同士になった。  

  

 ソフトなキスも甘交わす甘い関係となり、彼女との関係は進展していった。  

  

 それは、世間から二人の交際を隠して、隠れて付き合うという秘密の関係ということだ。  

 

「わたし、もう我慢できません!佐藤さん、いつまで、わたし達の関係を隠し続けるのですか?」 

未来たんが俺との関係を、公に公表したいと言ってくる。  

  

未来たん、それはマズイよ」と優しく諭す。 

 

 

「そうですか?」 

 

 

「もし、俺たちが交際を公表したら未来たんの熱狂的な ファンが黙っていないぞ」  

  

「そんなもの二人の愛の力でどうとでもなりますよ!」と彼女は、楽観的な考えを述べてくる。  

  

「そんな気楽に考えて大丈夫なのか?」 

「大丈夫ですよ。佐藤さん、大船に乗った気でいてください!」 

佐藤は、それに推し負けて、結局は、渋々、交際を公表することを了承してしまった。  

  

こうして、未来たんの交際公表会見が開かれることになったのだった。  

  

                

  

記者会見当日。  

  

 未来たんは、沢山、集まった記者の前で、「今日は、皆さんに、大事なお伝えをしないといけないことがあり、会見を開かせて頂きました。」と一泊置きくとこう続ける。 

「わたし、叶羽未来は、引退会見で話した、相手との正式な交際をしています!」と堂々と告げ、世間に向けて、佐藤との正式な交際を公表する。  

 

周囲の記者は絶句し、辺りは、騒然となり、記者からは、「これから交際相手とどうなっていく予定なのですか?」との問いに  

  

未来たんは、迷いなく、「彼とは、結婚を前提にお付き合いしていこうとを考えています!」  

  

と重大発言をする。  

  

記者は、ザワつき、全世界へ会見の様子が配信されているネット住民の間では波紋が広がっていた。  

 動画配信で視聴していた視聴者からは、動揺が、見て取れた。 

 

『交際の事実だけでも、驚いているのに、さらに結婚発表とは、開いた口が塞がらない』  

  

『アイドルに復帰した途端、好き放題言い出して、これだからヤンチャアイドルは...』  

  

など、否定的な意見がある中、一部のファンからは『交際&結婚発表、おめでとうございます。  

幸せになってください!』との祝福のコメントも寄せられたのだった。  

  

               ***  

 

自宅へと帰った、未来たんを迎え、佐藤は困惑していた。  

  

それは、そうだ。交際を公表すると言っていた彼女が、一緒に結婚まで発表したのだから。  

  

推しと結婚......今まで考えたこともなかった夢のような展開に頭が回っていかない。  

  

「どうしたのですか?佐藤さん?わたしが帰ってきてから考え込んではニヤけて」  

  

「そ、れは......」  

  

(だって、未来たんが会見であんなことを言うから。喜んでいいのやら、どう受け取っていいか分からないのだ)  

  

「わたしの記者会見、見てくれましたか?これから、ずっと一緒ですね。佐藤さん!」  

  

「そんな、いきなりそんなことを言われても......」  

  

「いきなりじゃないですよ、引退会見でも言っていましたから」  

 ほら、録画して残してありますから」と言って、テレビに録画していていた番組を再生する。 

 

 

『ですから一身上の都合ではありますが、お相手を探して射止めます。彼を墜として、いずれは幸せな家庭を築きたいです!』  

 

 

確かに、言っていた。録画していた引退会見のハイライトを確認して佐藤は、推しの結婚宣言と取れる言葉に嬉しくも、戦慄を覚えるのだった。  

  

                *** 

その日の、夕食は御馳走だった。 

 

 

未来たんの作る手料理が、煮魚に、お浸し、味噌汁といった和食中心の食卓になった。 

 

 

 中でも、サバの味噌煮は絶品だった。サバに沁み込んだ味噌味が白米と良く合い、口の中でハーモニーを奏でる。 

 

 

人参と供に、和えられたお浸しもいい味を出していて、しゃくしゃくと歯応えが楽しい。 

 

 

出汁と味噌のいい塩梅の豆腐とワカメの味噌汁もホッとする落ち着いた味わいで心を落ち着かせてくれる。 

 

 

こんなに美味しい料理が食べられて、俺は、幸せ者だなと噛みしめる。 

 それが、推しからの手料理とくれば、尚更だろう。 

 

 

夕食を終え、佐藤は洗い物の後片付けを終わらせて、リビングに戻る。 

 

 

 未来たんが座る、ソファの横に座る 

 

すると、彼女がソワソワしだした。 

 

 

どうしたのだろう?と訝しむと未来たんは、甘い吐息を零し、佐藤の肩に寄り添ってくる。 

 

 

「どうしたんだ?未来たん」 

 

 

動揺を隠せずに、そう訊ねるとピンク色の唇が物欲しそうにプルンと動いた。 

 

 

近くで、見ると、スゴク潤っていて、柔らかそうな肉質に視線が吸い寄せられる。 

 

 

(いけない、なにを考えているんだ。俺は!) 

 

 

「佐藤さん、わたしをベッドに連れていってください」 

 

 

「どうしたんだ、眠いのか?」 

そういえば、もう21時を回ろうとしている。佐藤は、彼女を伴い、寝室へと移動するのだった。 

 

 

未来たんの手を貸し、ベッドへと移動させて腰を下させると、彼女は、思むろに佐藤の肩に手を回し、抱きつく。 

 

 

 「ど、どうしたんだ!?未来たん」 

あまりの至近距離に彼女の甘い匂いとシャンプーのフローラルないい香りが鼻腔をくすぐる。 

 

 

 胸部には、彼女の双丘の柔らかな感触が伝わり、頭を蕩けさせる。 

 

 

一瞬、理性が飛びそうになってベッドに押し倒してしまいそうになる。 

 

(危なく、最低な野郎になるところだった) 

 その衝動を必死で堪えて一線を超えないように押し留まる。 

 

 

 「佐藤さん、いいですよ......そういうことしても」 

 

 

「え?!」 

 

この状況に置いてそういうことというのは、つまり、そういうことを指しているのだろう。 

 

 

 「だって、わたし達は正式に交際して婚約も果たしたのですから」 

 

 

「そ、それは......」 

(いくらなんでも交際したばかりで、そういう行為に及ぶのは早計な気がした) 

「つまり、佐藤さんにはわたしを好きにしていい権利があるということですよ」 

 

 

その一言で、佐藤は我慢が限界点に達し、彼女の肩を掴み、ベッドへと倒す。 

 

 

 そして、優しく、彼女の唇にソフトなタッチで自分のソレを重ねる。 

 

香りつきのリップの甘い匂いがする。 

 

 最初は、ソフトだったが、一度、柔らかな果実を味わってしまったら、次第に激しくディープなキスを落とす。彼女は、そんな佐藤を受け入れてキスを重ねていく。 

 「佐藤さん......」 

 

 

「未来たん......」 

 

 

唇を離すと一本の線を引いてお互い、見つめ合う。 

 

 

「なんだか、わたし変な気持ちになってきてしまいました」 

 

 

「俺も......」 

 

 

お互いにヒートアップしていって求め合い、推しと、初めての夜を過ごすのだった。


読んでくれてありがとうございます。


久しぶりの連載再開です


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