第43話 推しと後輩。そして修羅場

昨夜から一夜明け、今日は休日の土曜日だ。今日は、惰眠を貪ろうと決めていた。


 だが、朝早く、着信音によって睡眠を邪魔される。朝っぱらから誰だ?と思いスマホを見ると、春風からだった。なんだ、それなら出なくていいかと着信を無視する。


 諦めて直ぐに切るだろう。と高を括っていたが、予測に反して一向に鳴り止む気配がない。


 とにかく、うるさくて眠れない。仕方なくスマホ画面をスワイプして電話に出る。




「朝からうるせーな!こっちは静かに眠りたいんだよ!」




『先輩、寝ていたんですか。それなら、起きて一緒に遊びましょうよ!』




「なにが、それならなんだよ!寝ている最中だって言っただろ。遊ばねーよ!」




『先輩、せっかくの休日ですよ。をただ、惰眠を貪るだけで終わる気ですか?もったいないっスよ!』 




「いや、ずっとは寝ては過ごさないけどよ、今は、眠りたいんだよ」


『もったいな—い♪もったいな—い♪飛び起きよう♪』


「やめろ。某アイドル曲を模して促すな!」


『わたしも、今起きたところですよ。いいこと思いついたので電話したんです』






「目覚めて直ぐに会社の上司に電話できるお前のメンタルスゴイと思うよ」




『先輩、あざーっス!』




「いや、褒めていないからな!」


その軽い乗りにその無神経さに呆れて皮肉で言っているだけだ。




『あの、先輩。昨日行った喫茶店に三〇分後に集合でいいですか?』




「なに勝手に集合時間、決めているんだよ!集まることは確定か?!」


『はい、いいですよね?どうせ暇でしょ?!』




いや、暇だけど、人からそのセリフ言われるのはムカつくな。


 それに、休日の使い方というものもある。朝起きて三〇分後に集合とか鬼か!!


「その行動力、スゲーな。だが悪いけど、一時間後にしてくれないか?!」


まだ、朝飯も食べていなく重い瞼を擦って言う。




『朝食まだですよね?先輩、どうせなら喫茶でモーニングカフェしませんか?』




「モーニングカフェか。なんだかお洒落な響きだな。でも、俺は朝食は家で食べる派なんだ」




『じゃあ、9時に純喫茶モカで』と言って春風は通話を切った。




「おい!ちょっと待て!」


俺に選択権はないのだろうか?本当に朝から勝手な奴だ。






ベッドから起き上がると、キッチンで、ホットコーヒーを作りに向かう。


いくらモーニングカフェをするにしても、頭が覚醒していない状態で外へ出たくはなかった。




 朝食の準備をしている未来たんに、「今日は、朝食はいらない」という旨を伝えた。


未来たんは、不思議そうに「今日は、朝からお出掛けですか?」と尋ねてくる。




「ちょっと、友達に喫茶でモーニングカフェしようと誘われてね。いいかな?」




「いいですよ。佐藤さんと朝食を食べられないのは残念ですけど、友達との約束じゃあ、しょうがないですよね。」そう未来たんは淋しそうに言う。俺だって休みの日の朝は、未来たんとご飯を食べたい。




「ごめんね、じゃあ朝のコーヒーを飲んだら行ってくるよ」


未来たんはダイニングテーブルで朝食を俺は、とモーニングコーヒーと軽く、チョコを摘まんでコーヒーブレイクを終えた。




***


佐藤さんが土曜日の朝から出掛けるのは、珍しい。


 友達と喫茶でモーニングカフェするって言っていたけど、まさか女の子とじゃないよね。


 頭に過るのは昨日、佐藤さんのwriterで見た、一緒にカフェに来ていた女の子。今日も、その子と一緒にモーニングを共にするのではないか?


 不安が募り、居ても立ってもいられないで、出掛ける支度をして、佐藤さんの後を尾行した。




 佐藤さんが入ったのはとある雑居ビルの一階に併設している『純喫茶モカ』中へ入ると、佐藤さんは、昨日、カフェで一緒に居た女の子と逢引していた。やっぱり。疑惑が確信に変わる。浮気現場を見て確確信に変わった未来は突撃する。




「佐藤さん」こんなところで女の子とデートですか?」




「ち、違う!春風がまた喫茶に行きたいって聞かなくて仕方なくであって、浮気とかじゃないから」




「わたしとの朝食は一緒に摂らないで他の女の子とモーニングカフェとか、これを浮気と言わないで何と言うのですか?」と絶対凍土の冷気を感じさせ、未来たんは冷淡に言う。




「そ、れは......」




「デート?先輩、これってデートだったんですか?!」




「いや、違うだろただの後輩の友達との朝カフェだろ」




「そうか、友達同士の......」




「果たして、友達の定義とは??」と物申したい気持ちを堪え未来は不満を抱かずにはいられなかった。




「春風がどうしても、一緒に行きたいと言うから仕方なく。俺は、本当は、未来たんと一緒に過ごしたかったんだ!」




「佐藤さん、それはズルいですよ。他の女の子とのデートに来ていて彼女に出くわしたら、


『本当は行きたくなかった』なんて。それなら」最初から行かないでください」




「ご、ごめん」


不誠実なことを言ってしまった。春風に強引に約束を取り付けらえてしまったとはいえ、これは言い訳にしかならない。


「先輩、酷い、わたしとの関係は遊びだったんですか?」




「いや、お前は絶対に遊び感覚で誘ってきてただろ!」


仮に恋愛感情を抱いていたとしたらもう少し、配慮があったことだろう。


「あなた、佐藤さんとはどういう関係なんですか?」




「わたしは佐藤先輩とは仕事上の後輩です。恋人ではないので安心してください」




「あなたが、佐藤さんの後輩さんですか」




「はい、春風はるかぜ咲実えみと申します。よろしくおねがいします!」




「そう言うあなたは」佐藤さんのなんなのですか妹さんとかですか?」






「わたしはこう見えて成人した大人です!」




「そうなんですか、あまりに幼い印象を受けたのでまだ、中学生か高校を卒業したての子かと思いましたよ」




「失礼な、二十歳の大人ですよ。」




「中学生みたいなそのなりで?!」




「失礼な人ですね、こちらこそこちらこそよろしくお願いします。この泥棒猫......」


と外ッ面お良さから、一変、本音をこぼす未来たん。




こんな場の空気をなんと言うか知っている。昼ドラとかでよく彼氏や夫が愛人と密会に彼女が現れて起こる現象。そう、修羅場だ。




 そんな男として、最大の窮地に立たされていた。


            ***

読んでくれてありがとうございました。応援してくれると嬉しいです。


頑張って明日も更新したいです!























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