第42話 推しのヤンデレな一面
春風と二人きりで喫茶に行くのは最初は、気が進まなかったのだけど、誰かと一緒にカフェを共有するというのは案外、悪いものじゃないなと感じた。スクショしてwriterにも誰に見て貰う訳でもなく、嬉しさの余り投稿してしまった。『いいね』が1件だけついたけどきっと春風が見てくれたのだろう。今回は喫茶に連れて行ったら偉く喜んでいたもからな。
そして、喫茶から自宅アパートに帰ってきた。
未来たんは笑顔で出迎えてくれると思っていたが、そうではなかった。
「おかえりなさい、佐藤さん遅かったですね」と未来たんは、セーラー服にピンクのエプロン姿で出迎えてくれた。手には料理中だったのか包丁が握られていた。
「ごめん、ちょっと寄り道していた」
そう言えば、今日、仕事帰りに喫茶に寄ることは言っていなかったな。
未来たん、心配していたのかな?
「佐藤さん、デートは楽しかったですか?」
「えっ......いや、なんのことかな?」
もしかして、春風と喫茶に行っていたことがバレている?!でも、なんで?
「ところで、なんでセーラー服着ているの?」
童顔ロリフェイスのせいでまるで、中学生のようで可愛くてスゴク似合っていた。
「男の人は学生の制服が好きだと言いますからねお嫌いでしたか?」
「いや、そんなことはないよ可愛くて似合っていると思う。」
むしろ、大好物です!とは変態と思われそうで口には出さなかった。
「佐藤さんこれ、な~んだ?」と未来たんは自分のスマホ画面を見せてきた。
「そ、それは!?」
未来たんのスマホのディスプレイに表示されていたのは、俺が、さっき『CAFE&BARモカ』で春風とコーヒーブレイクした時にwriterに投稿した一枚の写真だった。
って、ちゃっかり、向かい側の春風も映っているしー!これじゃあ、デートと思われても可笑しくない。訂正しないと。
「こ、これは決して春風とデートしていたわけじゃなくて」
「そうですよね、あんな熱烈な告白をしておいてもう浮気するとか、あり得ないですよね」
「ところで、今夜は、さくらちゃんは居ないんだね」
なんとか、話題を変えようといつも夕食を共にするさくらちゃんが居ないことから話題を変える。
「話題を逸らさないでください!さくらちゃんなら友達と外食してくると言って外出しています」
「そ、そうなんだ。なんで、未来たんが俺のwriterのアカウントを知っているの?」
未来たんに教えたっけな?ていうか、さっきの1件の『いいね』は未来たんか!
「いくら好きな相手でもSNSをチェックされるのはちょっと......」
「それは、佐藤さんが投稿したWEB小説を読むためですよ。」
「そうだったんだ、良かった」
行動を監視されている訳ではなかった。これで、一安心だ。
「それに、佐藤さんが今日みたいに浮気していないかも見張れますしね♡」
包丁を掲げて言われると怖いな。全然、安心できない!浮気の恨みで刺されそうで怖い。
「も、申し訳ありませんでしたー!」
どうしよう、初めて未来たんが怖いと思った。愛が重すぎる。ヤンデレ属性もあったんだな。
「それと、夕食前なのに、喫茶で寄り道なんてダメですよ!」
「大丈夫、コーヒーしか飲んでいないから。お腹は空いているよ」
「んー,それならいいですけど、佐藤さんがわたしの料理を食べてくれるのなら」と機嫌を直す未来たん。
俺の彼女、可愛い過ぎないか?自分が作った夕食が入らないのではと怒っていたのだよな?お腹を空かせていると分かれば機嫌を直してくれたし。
俺は、なんて、愛されているのだろう。でも、愛が重すぎて怖い。
「でも、彼女がいる身で、ありながら、平気で他の女の子と遊んでくるのは、関心はしませんね」と拗ねていた。
「ごめん、本当は、一人でいくつもりだったんだけど、春風がどうしても一緒に連れていけってきかなくてさ」
春風にお願いされたからと言って一緒喫茶へいったのは事実だ。未来たんにとっては面白くないだろう。
「まあ、会社での付き合いもあるのは、分かります。多少は目を瞑りますが、あまり、女の子と一緒に出掛けないでくださいね。佐藤さんが浮気などしないのは、分かっているのですが、その......スゴク、不安になるのです」
「わかったよ、未来たん」
嫉妬か?嫉妬なのか?嫉妬なのだろう。可愛いな。もう!
「今日は、秋刀魚の塩焼きですよ。早く、手を洗ってきてください」
「やった!秋刀魚だ!」
佐藤は、手を洗い食卓のダイニングテーブルへとついた。
「いただきます!」食卓には秋刀魚とカボチャのスープ。かぼちゃサラダ、蒸しナスが並んだ。
うん、うまい!秋の味覚、最高だ!
「美味しいよ、未来たん」
「そうですか?お口に合って良かったです」
「そうだ!佐藤さん、お知らせがあったのでした」
「なんだろ、お知らせって?」
嬉しいお知らせかな?悲しいお知らせならイヤだな。でも、未来たんの嬉しそうな顔から、恐らく、前者だろう。
「なんと、『放課後シスターズ』に五人目の新メンバーを迎える為に、新メンバー加入オーディション』を開催することになりました!」
「あと、開催日は公式サイトで後日、発表がありますからね」と未来たんは続けて説明する。
「おお、遂に五人目か。アイドルグループらしくなるな」
アイドルグループといったら、5人組が王道だろう。今から楽しみだ。
「佐藤さん、新メンバーが入っても、わたしのことを推してくれますか?」
「勿論、永久に推すよ!」
未来たんのさっき訴えには、推し変しないで欲しいという思いが込められていたのだろう。
「安心して、推し変なんてしないから」
こんなに可愛い推しの子がいるのに誰が推し変なんてするものか。
「えへへ、ありがとうございます」と未来たんは,はにかみ少し照れて頬を火照らせて言う。
可愛いなこの子は!こうして、佐藤は、推しへの愛を誓った。
***
「そうだ、未来たんこのVtuber知っているかな?」食事が終わって、リビングで、テレビを見ながらくつろいでいると佐藤はスマホでItubeのアプリを起動して彼女に見せる。
「Vtuberアイドルですか?かわいいですね」と未来たんは、関心を示してくれた。
「そうなんだよ。結城雪姫ちゃんという子なんだけど、クール系というのかな?スゴク可愛いんだ」スマホのディスプレイには、ライトブルーのミディアムヘアーにコサージュとリボンカチューシャを付けたニットカーディガンとホットパンツ姿の美少女アバターが映し出されていた。
「へー、声も可愛らしいですねーって、早速、他の女の子に推し変しているじゃないですかー!」と頬をぷくっと膨らませてジト目で睨みつける未来たん。
その柔らかそうな頬をつついたら怒るのだろうな。と上げかけた手を下げる。
「でも、ネットの推しは、ギリギリセーフじゃないかな?」
そんなこと言ったらItubeを見て推しライバーを作れない。ここは目を瞑ってもらいたい。
「まあ、いいですけど......」未来たんは不服そうにそうこぼす。
「そうか、良かった」と内心ホッとする。ネットの推しは良しとする人でよかった。
「まあ、男の子を推していないだけ安心しました」
「もし、男の子の推しがにできたら?」
「わたしが一番の推しならそれでいいですよ」
「そ、そう?」
でも、男が男を好きになるなんてあり得ないだろう。俺は、女の子が好きなんだ!
「ハハ、そこは安心してよ。俺は、あくまで女の子が好きだからさ!」
「なんだか、女たらしのセリフみたいですね」
「大丈夫、俺は未来たんにしかデレないから」
「そうですか?じゃあ、わたしが佐藤さんをデレデレにしてあげますからね」と甘ったるい声で言われる。
「お手柔らかに」
身も心も蕩けそうな思いだった。
***
読んでくれてありがとうございます。次回から本章の本筋に入ります。
新キャラの登場です。
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