5章 恋人になって少しずづ
第41話 後輩と喫茶店
今日は、仕事が定時に終わりそうだ。久しぶりに、喫茶店でも行くかな。
仕事がスムーズに進み、調子よく定時に仕事を上れそうな佐藤は、一人で行きつけの喫茶店に行こうと考えていた。
夏が終わり、季節は、秋に移り変わり、肌寒さを感じてきた。
こういう寒い季節は、喫茶店で熱々のカフェラテに限る。
自宅でインスタントでホットコーヒーを飲むのもいいのだが、本格コーヒーに勝るものはない。
昔、学生の頃は自宅でコーヒー豆を挽いてドリップコーヒーを淹れていたが、ブラック企業に入社してからは、仕事が、忙しくて、家でコーヒーを淹れることもしなくなってしまい
ドリップコーヒーを飲むとしたら市販のドリップパックを購入して済ませるようになってしまった。
「先輩、お疲れ様です!この後、時間ありますか?良かったらわたしと『スタダ』にコーヒーを飲みに行きませんか?」
「予定ならある。仕事から上ったら、喫茶店に行くからな」
「じゃあ、わたしと一緒ですね、それならスタダに一緒に行きましょうよ。ね?」
「スタダと同じ、だと......」
耳を疑った。純喫茶がスタダと同じと可笑しなことを言う。
スタダを下に見ているわけではないが似て異なるものだろう。
「え?なにか違いましたか?」
「いや、別に」
『スターダストコーヒー』略称『スタダ』アメリカ発祥のコーヒー店で90年代に日本の東京・銀座第一号店をオープンしてからのちに全国区に店舗を広げていった大手コーヒーチェーン店。
「スタダは若者が集う、お洒落なカフェだ。だが、俺が行く純喫茶のは、シックで落ち着いたカフェだ。」
「先輩ってもしかして、コーヒーにうるさい人ですか?」
「いや、別にそこまでうるさく言わないぞ」
「じゃあ、一緒にフラペチーノを飲みに行きましょうよー」
「フラペチーノ、だと......」
あれは、もうコーヒーとは言えない。コーヒーの中にクリームをこれでもかというほどホイップしたそれは、もはやスイーツと言っても過言ではない。コーヒーとは言えない、むしろそれは......
「フラッペなんて泥水じゃないか?」
「はい?先輩、今何か言いましたか?」
「い、いやー俺は、甘いものは得意じゃないからな。」
これで、誤魔化せたか?ギリギリセーフか?!泥水発言は言い過ぎたかもしれない。
『スタダ』の皆さん、ごめんなさい。
「今、先輩フラッペのことを泥水って言いましたよね?」
「いやー、言っていないっスよ?」
「キレてないっスよ」みたいに言ってもダメですからね!
「ちっ、ダメだったか」
「そこまで、言うなら、純喫茶とやらがどれだけのものか見せて貰おうじゃないですか!?」
「い、いいぞ。別に!」
『スタダ』より、断然、純喫茶派の佐藤は、春風の誘いに乗る。
「見せて貰おうか、純喫茶とやらの実力を」
春風は、そんな赤い彗星の某少佐のようなことを言ってくる。
こうして、春風と佐藤の行きつけの純喫茶に行くことになった。
***
仕事終わり、春風と純喫茶モカへと着き、一戸建ての古めかしい扉を開けるとドアベルが優しげな音色を鳴らす。
「いらっしゃいませー。あ、佐藤さん、お久しぶりです。ニ名様ですか?」
「はい、二名です。久しぶりです、桐間さん」
「会社の後輩を連れてきました。彼女じゃないですから」
「??なにも、言っていませんよ」
「
「顔なじみなんですか?」
「ああ、会社に通いながら,癒しの空間として利用していたから、バリスタの桐間さんとは、付き合いが長いんだ」
『CAFE&BARモカ』のバリスタ兼ウェイトレスの
キリマンジャロとモカを足したような名前だ。二二歳で社会人。なのに童顔で、高校生のようなフレッシュな見た目。その、のキュートさから、彼女目当てで来店するお客も多数いる。佐藤もそのうちの一人だった。
最近は、人手が足りないと困っているとのこと。
「どうぞ、このテーブル席へお座りください」と店内に通され、テーブル席へとつく。
ジャズミュージックのBGMが流れる店内は、昭和のレトロ感が漂う懐かしの空間だった。
木目調のテーブル席に座り、メニュー表に目を落とす。
「このシック雰囲気とモダンな内装がいいんだよなー」
「先輩、渋いっスね。おじさんみたい」とからかい笑ってくる。
「うるせー、二六だからまだ、オッサンだ!」
おじさんだと初老のイメージなんだよな。失礼な奴だ。
「この喫茶の雰囲気が好きだからよく通ってるんだよなー」
「先輩、よく通っているってもしかして一人でですか?」
「ああ、そうだけど、悪いか?」
元々、一人で喫茶に行くのが好きなのだ。ましてや春風なんかに憩いの場を教えたくなんかなかった。
「流石、先輩!ぼっちの極みっスね!」
「いや、なにが流石なのかは分からないけど、バカにされていることだけは分かる。」
「ソロカフェをバカにするなよな!」
「ソロキャンみたいに格好よく言っていますけど、ただ友達のいないぼっちですからねw」
「てめぇ......」
言いたい放題言いやがって、連れてくるんじゃなかった。
「そんな、寂しい先輩に特別に、今後はわたしが一緒に行ってあげましょうか?」
(可愛い後輩と一緒にカフェなんて願ってもないことですよね?)
「だが、断る。俺は、一人が好きだからな。お前が一緒だとうるさいからな」
ちっともありがたくない誘いだった。
「そんなーわたしも先輩とカフェに行きたいのにー!」
「ふん、友達と『スタダ』にでも行ってろ」
「そうだ、春風、お前にいいことを教えてやるよ」
「『スタダ』でカフェモカやフラペチーノばかり飲んでいると太るぞ。」
カフェモカで、クリーム増しトッピングなんて、カロリーの塊だろう順調に成長することだろう。どこがとは言わないが。
「大丈夫ですよ、たまにしか行きませんから」
「あとな、カフェインと甘いものを一緒に摂ると糖分を体に蓄積する働きがあるんだぞ」
「うわー!やめてくださいよー!『スタダ』のコーヒーが飲めなくなるー!」
と、春風のと悲痛な叫びが店内に児玉する。
「それなら、先輩、コーヒーとミルクで割ったカフェラテが飲みたいです!」
「おい、それは、カフェラテじゃなくてカフェオレだぞ」
春風はコーヒー知識で初心者が一番陥りやすい間違ったことを得意顔で言ってくる。
「え?何が違うんですか?」
「カフェラテはエスプレッソとミルクで、1:4割ったのがカフェラテだ。」
「じゃあ、カフェオレは?」
「ドリップコーヒーとミルクで1:1割ったのが、カフェオレだ」
この程度のカフェラテとカフェオレの違いくらい常識だろう。
「さすが先輩、博識~!」
「いや、これくらい分かれよ」
「先輩、コーヒーにクリームがホイップされたやつは無いんですか?」
「ああ、あるぞ。ウィンナーコーヒーだな」
「ウィンナーコーヒーって、先輩クリームが入ってるやつって言っているじゃないですか!」
「お前、絶対に勘違いしているだろ、食べ物のウィンナーじゃないからな」
「え?!コーヒーにウィンナーが入っているからウィンナーコーヒーて言うじゃないんですか?!」
「違うぞ。ウィンナーコーヒーっていうのは、コーヒーに生クリームがホイップされているコーヒーのことをのを差すんだ」
「そうなんですかー」
「そもそもウィンナーコーヒーは、オーストラリアのウィーン発祥とされる、コーヒーの飲み方の一つなんだ」
正確には、ウィンナ・コーヒーだが、喫茶店ではウィンナーコーヒーと表記することが多い。
「へー、そうなんですかー先輩、」物知り―!」
「ハハ、褒めても奢ってやらないからな」
「ぶー、先輩のケチー」
「佐藤さん、注文は決まりましたか?」とウェイトレス兼バリスタの萌香ちゃんがオーダーを聞きに来る。
「俺は、カフェラテで」
「わたしは、ウィンナーコーヒーでお願いします」
「かそこまりました、少々お待ちください」
と佐藤と春風はそれぞれのコーヒーをオーダーしていた。
このあと、春風と二人でコーヒーブレイクを愉しんだ。
***
読んでくれてありがとうございます。ずっと書きたかった喫茶店の回です。
趣味を詰め込んだ回になりました。一部表現で不快な思いにさせたらすみません。
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